(9月の特集本)ごくらくちんみ/杉浦日向子(著)

2018/09/28 (Fri)



今回の特集書籍にはおいしそうなメニューがあふれているので、空腹時の読書は要注意です!


旨いだけとは限らぬちんみは、人生の、妙味そのもの。
お酒のつまみを短い小説で綴ったユニークな本です。未婚の母を決意したタマヨが食べたいという「たたみいわし」。幼なじみの墓参の帰りに居酒屋で味わう「かつおへそ」。元放蕩息子のロクさんが慈しみつつ食す「ひょうたん」。ほかにも、「青ムロくさや」「からすみ」「ドライトマト」など68種。江戸の達人が現代人に贈る、ちんみと酒を入り口にした女と男の物語。全編自筆イラスト付き。粋でしみじみ味わい深い、著者最後の傑作掌編小説集。 「うばい」とか「ばくらい」なんてつまみ、ご存じでしたか? 珍味がメインテーマではありますが、それをテーマにした人間模様の描写が素晴らしい。ただたんに旨いだけではない。ほろ苦かったり、塩っぱかったり、まさに小鉢の珍味のような、珠玉の人間の模様たち。皿を舐めるように一字一句噛み締め、転がし、堪能し、舌鼓や膝を打つように、涙腺緩ませ、読み進む。生きることや死ぬこと、愛することや別れること、それらと「飲み、食べること」は、きちんと同じお品書きにある。読みながらよだれの出そうな本です。杉浦さんの温かい挿し絵にはほっとします。
杉浦日向子
1958(昭和33)年、東京生れ。江戸風俗研究家。「通信室乃梅」で漫画家としてデビュー。以来、一貫して江戸風俗を題材にした作品を描き、’84年『合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞、’88年『風流江戸雀』で文芸春秋漫画賞を受賞。
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