〈ぬくもり①〉そのぬくもりはきえない/岩瀬 成子(著)

2019/02/10 (Sun)

寒がりやさんには厳しい冬。
ストーブとホットドリンクで温まったら、次は読書で心の中たら温まりませんか?


子どもは親に依存せざるを得ない。4年生の女の子・波も、お母さんの言葉に疑問すら抱けず、無理をしているのかもわからない。お腹の中のモヤモヤが言葉にならず、言おうとするとヘナヘナと萎んでしまう。ひとり暮らしのおばあさんの犬の散歩を引き受けた波は、その家の二階でふしぎな男の子、朝夫と出会う。何だか変。ちょっとずれている。でも気になる。少しずつ親しくなり、やがてそこが時間のねじれた空間だということがわかってきた。時空をこえて惹かれあった朝夫によって、波は変わっていく。決して焦らず、いろんなことを考える。言われるがままのようでいて、芯は揺るがない。いろんな人間がいる。波の心情がわがことのように胸に迫る人もいるだろう。じれったいと思う人もいるかもしれない。でも誰だって多かれ少なかれ、自分の気持ちも持て余し、伝えられないもどかしさに苛立つことがあるはず。波のピュアな心情には誰もがかつての戸惑いやおぼつかなさを思い出し、共感を抱くだろう。波にエールを送りながら、かつて感受性豊かな子どもだった自分をだきしめよう。
岩瀬成子
1950年、山口県に生まれる。78年にデビュー作『朝はだんだん見えてくる』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。92年に『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で小学館文学賞、産経児童出版文化賞を受賞。95年に『ステゴザウルス』『迷い鳥とぶ』の二作により路傍の石文学賞を受賞。

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〈季節の本棚〉ぬくもり 【2019/02/21】
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