(3月特集)魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─/奥野修司(著)

2020/03/07 (Sat)

誰もが立ちすくんだあの日から9年。
いまだから読みたい本――3.11後の日本

あの未曾有の大震災から、今年で6年――。
その被災地で、死者を身近に感じる奇譚が語られているという。最愛の家族や愛しい人を大津波でうしない、悲哀の中で生きる人びとの日常に、突然起きた不思議な体験の数々……。《愛する亡夫との〝再会″で、遺された妻に語られた思いは……。津波で逝った愛娘が、母や祖母のもとに帰ってきた日に……。死んだ兄から携帯電話にメールが届いて……。早逝した三歳の息子が現れ、ママに微笑んで……≫だが、〝霊体験″としか、表現できないこうした〝不思議でかけがえのない体験″によって、絶望にまみれた人びとの心は救われたのだった――。著者は3年半以上も、そのひとつひとつを丹念に何度も何度も聞き続け、検証し、選び出し、記録してきた。「今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい」という遺族たちの思いが噴き出した、初めての〝告白″を、大宅賞作家が優しい視線と柔らかな筆致で描き出す! 唯一無二の〝奇跡″と〝再生″の物語を紡ぎ出す、感動と感涙のノンフィクション。

大震災で愛する者を失った人びとの奇跡の体験と再生の物語
未曾有の災害で愛する者に突然死なれ、絶望の淵に立たされた人々の心を救ったのは、奇跡としかいいようのない体験だった。布団に入ってきた夫を「抱いてあげればよかった」と悔いる妻。階上の息子の足音を聞く母。死亡届を書いている時に兄からメールを受け取った妹。それは夢だったのか、幻なのか―。再会を願う痛切な声と奇跡を丹念に拾い集めた感動のドキュメンタリー。
東日本大震災後に被災地で起こった不思議な現象の数々。明日も昨日と同じ日常が続くと思っていた。あの津波が大切な人の命を奪うまでは。ある人は鮮明な夢の中で生き延びた被災者を励ますように語りかける。またある人は携帯電話から懐かしい声を聴かせてくれる。親が子を想い、子が親を想うとき、この世とあの世は繋がり、生者と死者の魂の共鳴が始まる。肉体は滅びても生者の記憶の中で死者は生き続ける。体験者にとっての真実は、死にゆく者とそれを見送る者たちを優しく包んでくれるだろうか。死んでもそばにいてほしいあの人を想いながら読了。
読み始めてから違和感なく、こういうことはあったのだろうなと思った。亡くなった人が大切な人たちの前に現れ語りかけ,生者に安らぎや希望を与える。本書は著者が被災地を巡り被災者から直接聴き取ったそんな経験談を集めたもの。読後感じるのは不思議な温かみ。あの震災による死者と生者の対話には若松英輔氏の仕事やいとうせいこう氏「想像ラジオ」もある。この世界には今の私に見えていない豊饒な諸相があり,人はそれら諸相の中で生かされているのだろう。その諸相は私が必要としたときにはきっと目の前に開かれるのだろう。そう思わせてくれるいくつもの声。奥野医師のことが書かれた本も読んだし、死者論といってもよい若松英輔氏の著作も好きだ。死者はきっと傍らにいて、何かを送ってくれている。文中に「体は単なる肉体ではない。魂の器なのだと思う。」とある。魂の入る余地もなくなってしまうくらい純粋さをなくして生きてきた私には、そばにいてほしい魂だけが増えていく。
奥野修司[オクノ・シュウジ]…ジャーナリスト・ノンフィクション作家
1948年7月5日、大阪府生れ。立命館大学卒業。ノンフィクション作家。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。その他『小沢一郎 覇者の履歴書』、『皇太子誕生』、『心にナイフをしのばせて』、『看取り先生の遺言』、『放射能に抗う』、『再生の島』、『「副作用のない抗がん剤」の誕生』、『魂でもいいから、そばにいて』、『丹野智文 笑顔で生きる』(丹野智文と共著)、『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(徳山大樹と共著)、『ゆかいな認知症』、『天皇の憂鬱』、『美智子さまご出産秘話』、『なぜか笑顔になれる認知症介護』など著作多数。
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