(3月特集)河北新報のいちばん長い日: 震災下の地元紙 (文春文庫) /河北新報社,河北新報=(著)

2020/03/16 (Mon)

誰もが立ちすくんだあの日から9年。
いまだから読みたい本――3.11後の日本

仙台に本社を置く河北新報は、東日本大震災で壊滅的な被害を蒙った。沿岸の支局は津波に呑まれ、安否不明の記者も続出。本社のコンピューターが倒れ、紙面制作の機能を失う。「それでも新聞をつくらなければならない!」この絶対命題を前に、彼らは何を思いどう行動したのか。“新聞人”たちの凄絶な闘いの記録。

東日本大震災直後、地元新聞社である河北新報がその時どう動いたか、どう報道したか。自らも被災者であり、物資不足にあえぎながら、それでも正しい情報を迅速に届けるべく奮闘する。倒壊した組版システム、被災者から浴びた罵声……彼らは何を思って新聞を出し続けたのか。 被災のさなか、唯一のメディアとして動いていた地方紙とその周辺をノンフィクションで綴った記録。あの震災下でどうやって新聞を発行したか、地元で起こった甚大な被害をどのように伝えるかなど地元紙ならではエピソードが語られる。表現のひとつひとつや、なにを今、発信すべきか、現地へ足を運んでの取材、空撮時に見つけたSOS発信、災害のもとでは、すべてがアナログに戻り、新聞という情報源がいかに大事かという視点は、改めて考えさせられた。
河北新報。その名の由来は「白河以北一山100文」という侮蔑への強烈な反骨心。震災当日の号外から新聞を発行し続けた。テレビもラジオもネットも機能しない中届けられた新聞。取材,印刷,輸送,配送。幾重にも人手を介したその紙面からは情報だけでなく,諦めない,助け合う,繋がるというメッセージが発せられていた。「被災しているからこそ、他の全国紙では伝えられないことを伝えることができる。」「地元紙として、被災者に寄り添う」という立ち位置を貫き,今伝えるべきことは?と問を重ねていったプロセスに胸が熱くなる河北新報のみならず被災地で活動した多くの人が、ライフライン壊滅と物流途絶の中で大きな困難に直面していたはず。誰もがぎりぎりの状況下で必死だった。そんな中、震災の記憶を決して風化させてはならない。あのときほど職業人としての使命感を感じたときもなかったと記者は言う。世の中の大半のことは、一方の立場から「正しい」ことを語れる訳ではないんだろうなと再認識した。 そして、記者は往々にしてその狭間で悩み続けると……。
全国紙や在京キー局は、熱しやすく冷めやすい。震災発生直後は膨大なスタッフを投入して地元紙を圧倒するが、一段落したら潮が引くように切り上げる。だが地元紙はその後も長く被災者寄り添い続ける。震災発生直後は見えなかった問題が、数ヵ月後に顕在化して被災者たちを苦しめることもある。それらを丹念にフォローできるのは地元紙しかない。 河北新報社。震災という未曽有の非常時における同社の闘いの記録をその瞬間から克明に収め、震災後半年での発行本。現場を取材する記者だけでなく、整理部、総務部、営業部、販売店、新潟などの友好紙の動きにまでスポットを当てて、オール河北が毎日新聞を家庭に届ける、という当たり前を実現するために奮闘したかよくわかる。新聞社の震災の記録は生々しく、当時の空気を思い出させる。読みやすいといえば失礼になるかもしれないが、報道に携わっている方の文章だけに、当時の風景、記者たち、それを支える人たちの心情がよく伝わる。何度も胸が詰まって細く息を吐き出しながら読んだ。まだまだ復興の途中、3.11しか報道されなくなった今、改めて情報の在り方を考えさせられた。あの時も今も私は何もできていないけど、絶対に忘れないでいようと思う。
河北新報社
仙台市に本社を置く新聞社であり、東北地方のブロック紙である河北新報を発行している。新聞事業以外にも、スポーツ・文化事業や出版事業も行っている。2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で被災した。
┣事業者:株式会社河北新報社
┣本社:宮城県仙台市青葉区五橋1-2-28
┣設立:1897年(明治30年)
┣事業内容:新聞出版・販売
┣代表者:一力雅彦
┣外部リンク:河北新報社(会社案内)
河北新報
宮城県仙台市に本社を置く河北新報社が発行する日刊新聞で、東北地方のブロック紙として扱われることもあるが、実態は宮城県紙。販売部数(日本ABC協会調査)は朝刊45万4519部、夕刊5万2144部(2016年1-6月平均)。
┣種類:日刊紙
┣サイズ:ブランケット判
┣創刊:1897年(明治30年)1月17日
発行数
┣朝刊:427,319部
┣夕刊:44,238部
┃(2019年4月、日本ABC協会調べ)
┣ウェブサイト
┣河北新報オンラインニュース
┣📳河北新報ニュース (@kahoku_shimpo) - Twitter(朝刊及び統合版を担当)
┣📳河北新報社夕刊編集部 (@yukan_kahoku) - Twitter
- 関連記事
-
- (3月特集)いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(全3巻) (モーニング KC) /竜田 一人(著) (2020/03/19)
- (3月特集)ナインデイズ 岩手県災害対策本部の闘い (幻冬舎文庫)/河原れん(著) (2020/03/18)
- (3月特集)河北新報のいちばん長い日: 震災下の地元紙 (文春文庫) /河北新報社,河北新報=(著) (2020/03/16)
- (3月特集)希望の地図 3・11から始まる物語 (幻冬舎文庫)/重松 清(著) (2020/03/14)
- (3月特集)小説 Fukushima 50 (角川文庫)/周木 律(著) (2020/03/12)
- (3月特集) 暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 (新潮文庫)/彩瀬 まる(著) (2020/03/10)
- (3月特集)紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)/佐々涼子(著) (2020/03/08)
- (3月特集)魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─/奥野修司(著) (2020/03/07)
- (3月特集)復興の書店 (小学館文庫)/稲泉 連(著) (2020/03/06)
- (3月特集)石巻・にゃんこ島の奇跡 :田代島で始まった“猫たちの復興プロジェクト”/石丸 かずみ(著) (2020/03/05)
2020年冬、月ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』≪ | HOME | ≫2020年冬、日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』
コメントフォーム

この記事へのトラックバック

この記事のトラックバックURL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
2020年冬、月ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』≪ | HOME | ≫2020年冬、日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』