八月の母(角川書店単行本)/早見和真(著)

2022/05/24 (Tue)

📚フィクション↓
『イノセント・デイズ』を今一度書く。そして「超える」がテーマでした。僕自身はその確信を得ています――早見和真
長い間歪み続けた愛や母性の歴史、地層のように積み重なる闇に確かな兆しを探し続けた。神が人を嘲笑い続けてきたのか。人が神を嘲笑い続けてきたのか。神なるものへの幻想と呪縛を解き放つ祈りとその熱に、心が深く確かに蠢いた。
――池松壮亮(俳優)
容赦などまるでない。「母」にこだわる作家が、母という絶対性に対峙した。確かなものなど何ひとつない世の中で、早見和真は正しい光を見つけようとしている。その試みには、当然異様な熱が帯びる。
――石井裕也(映画監督)
私も命を繋いでいく役目を担うのだろうか。微かな光と絶望に怯えながら、夢中で読み進めた。どうしようもない日々に、早見さんはいつだって、隣で一緒に座り込んでくれるんだ。
――長濱ねる(タレント)
ラストに現れるヒロインの強い覚悟と意思の力に、私たちは元気づけられる。辛く暗く苦しい話だが、そういう発見があるかぎり、小説はまだまだ捨てたものではない。
――北上次郎氏(書評家)(「カドブン」書評より抜粋)
彼女たちは、蟻地獄の中で、必死にもがいていた。
愛媛県伊予市。越智エリカは海に面したこの街から「いつか必ず出ていきたい」と願っていた。しかしその機会が訪れようとするたび、スナックを経営する母・美智子が目の前に立ち塞がった。そして、自らも予期せず最愛の娘を授かるが──。うだるような暑さだった八月。あの日、あの団地の一室で何が起きたのか。執着、嫉妬、怒り、焦り……。人間の内に秘められた負の感情が一気にむき出しになっていく。強烈な愛と憎しみで結ばれた母と娘の長く狂おしい物語。ここにあるのは、かつて見たことのない絶望か、希望か──。

著者究極の代表作、誕生。 連綿と続く、女たちの“鎖”の物語。

渦(荒れた家庭)があるから穏やかな海(平和な家庭)がある。 読了した人の心に傷を残す。天童荒太さんの名作「家族狩り」以来の読後感。 大傑作!重い、ひたすら重い。重くて深くて胸やけがする思い。小説として、物語として読んでいても、心にどす黒い物が生まれてきてしまう。殆どの住人が顔見知りという地方の閉塞感と、母と娘三代にわたる粘度の高い血の呪い。ラストはようやく陽向が母の呪縛から逃れて前を向いて歩いて行こうとしてたのでようやく息がつけた。紘子の存在が陽向をアリ地獄から救えていたのなら、それが唯一の希望です。ただ著者の筆力により、集団心理の怖さだったり、愛情という名の心の鎖だったり、唯一の逃げ場と思い込んでしまう閉塞感であったりと、読み進めるたびに考えさせられるほど没頭しました。陽向が幸せに向けて負の螺旋を抜ける決意をしたのは、救いなので、強く生きて欲しいと願いました。これが実際に起きた事件から着想を得たとは……、実世界は恐い。

1977年神奈川県生まれ。愛媛県在住。2008年『ひゃくはち』で作家デビュー。15年『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、20年『ザ・ロイヤルファミリー』で19年度JRA賞馬事文化賞と第33回山本周五郎賞のダブル受賞。同年『店長がバカすぎて』で本屋大賞9位。『あの夏の正解』で「2021年 Yahoo! ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」ノミネート。他の著書に『スリーピング・ブッダ』『95』『ぼくたちの家族』『笑うマトリョーシカ』『かなしきデブ猫ちゃん』など。

関|連|情|報

ここにあるのは、かつて見たことのない絶望か、希望か──。早見和真が描く女たちの“鎖”の物語。最新小説『八月の母』4月4日発売!

「『イノセント・デイズ』を超えるものを書きたい」早見和真新連載「八月の母」開始スペシャルインタビュー

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