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悲劇の名門 團十郎十二代/中川 右介

kage

2012/04/29 (Sun)

アイコンりす今回のBook案内人・・・・Arika
★海老蔵さんもぶっとぶ、市川家の歴史…★・・・今回のBook案内人/Arika


悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書)悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書)
(2011/04)
中川 右介

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川海老蔵さんのスキャンダルが世を騒がしたこともありました。

あの歌舞伎界でと驚きましたが、この本を読めば「なるほど」と納得しまいそう!

そもそも市川宗家が十二代も続き、しかも世襲が未だ命脈を保っている秘密はいったい何か?

この本は現代まで市川家が歌舞伎界をリードし続けた姿を詳しく紹介し、その華やかな芸の世界と驚くべきスキャンダルの歴史を克明に描きます。

初代は舞台裏で刺殺、二代目の弟子がお妾さんと駆け落ち、七代目は江戸追放、八代目は謎の自殺・・・。

それでも不動の『十八番』を制定し、常に頂点を目指した凄まじい執念。

「皆々目の下に見くだし、蟲のやうに思ふがよし」(五代目家訓)」

週刊誌的興味に止まらぬ、演劇史としても中身の濃い一冊です。







Arika感想

昨年2010年は初代團十郎生誕350年。

そこで書かれた團十郎家の歴史がこの本。

初代誕生(推定年1660年)から、2010年12月の当代と海老蔵さんまでの歴史が物語風に展開される。
この著者の従来の執筆に比べると、少し取りつきが悪い。

いつもなら、のっけからドラマが展開するのだが、今回は初代のルーツに関する諸説の文献解説から始まるからだろうと思う。

断然面白くなるのは、四代目(襲名1754年)あたりから。

この時代は落語の『中村仲蔵』や『淀五郎』でもお馴染みの初代仲蔵や、名優・初代市川團蔵が活躍する時代。

團十郎と團蔵とのデッドヒート、さらに松本幸四郎、市川八百蔵、瀬川菊之丞(王子路考)らと、『役者評判記』の位置付けを競う。

「大極上々吉」「極上々吉」「上々吉」…。

上方から東に下った中村歌右衛門や尾上菊五郎が登場するのもこの時代。

これらの役者と競いあいながら、四代目は市川一門のみならず、歌舞伎役者全体の「親方」の座をゆるぎないものにしていく…なるほど、なるほど。

この本の帯には【「至芸」の陰にスキャンダルあり】とか、【傲慢さこそ「團十郎」】とか、賑々しい。

「おれさへ出れば見物嬉(うれ)しがるといふ心がよし」

「皆々目の下に見くだし、蟲(むし)のやうに思ふがよし」


五代目市川團十郎が残した芸談である。

つまり團十郎家とは「傲慢(ごうまん)であることを義務づけられた家」だ、と中川さんは言いたいのだろうが現代においては、役者である前によき社会人であれ、という声の方が優勢だろうと思う。

一方で、明治の世で歌舞伎役者の地位を向上させ、「劇聖」と呼ばれたのが九代目團十郎。

役者も「市民」であることを選んだのも團十郎なのだ。

團十郎家の歴史を文献によって初代から丹念に追い、歌舞伎そのものの変遷までを描き出した。

「團十郎家は、過去の伝統の代表であると同時に、現代に続く改革者でもあります。常に革命家が出て来て、古いものを守りつつも新しいものを取り入れてきた歴史なのです」

初代が襲名した時代以降、「役者評判記」も隆盛で、ご見物によって芝居が育てられていった。

客が入らなければ興行は打ち切りになるし、客が押し寄せれば興行は何か月も続く。

ご見物の支持のもとに、芝居はその時代の嗜好をとりいれながら、江戸の街に息づいていった。

こういう歴史も、この本は伝える。

では、競い合う劇界にあって、なぜ市川宗家が必要とされたのか、考えつつ読んだ。

いや、江戸の歌舞伎は市川團十郎家が存続したことで、盤石だったといえるかもしれない。

二代目は17歳、三代目15歳、四代目44歳、五代目30歳、六代目14歳…で團十郎襲名。

若くても、襲名から数年後には座頭に。

座頭の位置は厳しい。

ライバルと競い、あるいはご見物に叩かれ、打ちのめされる。

時には刺殺され、時には自殺へと追い込まれる。

それでも市川宗家は存続し続ける。

つぶれない宗家の権威があったからこそ、芸が競え、芝居が残ったのかもしれない。

観客よりも、年功序列に基づく大幹部の意向が強く感じられる、昨今の歌舞伎興行。

「海老蔵はもっと謙虚に」なんて言葉の大合唱。

なに言ってやんでェ。謙虚に、なんて言う人ほど謙虚じゃない。

秩序を守りたいだけ! 海老蔵さんは非凡なのだ!

そして、海老蔵さんの魅力は、照れずにいうなら、まず「美しさ」と思う。

そんなことを想いながら、読み終わった。





中川 右介
1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「クラシックジャーナル」編集長、出版社「アルファベータ」代表取締役。海外の出版社と提携し、芸術家や文学者の評伝の翻訳本を出版する傍ら、自らもクラシック、歌舞伎を中心に精力的に執筆活動を行う。
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