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【おすすめBOOKフェア】ほんのまくらフェア19~24

kage

2014/06/03 (Tue)

Arika(フェア)1

紀伊国屋「ほんのまくらフェア」19~24

ほんのまくら2a

本の出だしの文章=「まくら」と呼びます。

有名なものならたくさんある。

「国境のトンネルを抜けると~」…by『雪国』川端康成

「ゆく河の流れは絶えずして~」…by『方丈記 』鴨長明

「メロスは激怒した」by『走れメロス』太宰治

「桜の樹の下には~」by『桜の樹の下には』 梶井 基次郎

「スプリットタンって~」・・・by『蛇とピアス』金原ひとみ


このフェアは、単行本に、冒頭の一文の『まくら』のみ印刷したカバーをつけてビニールで封印。

オリジナルカバーに載っているそれぞれの「まくら」に何を感じ取ったのでしょうか?

それはもう本当に研ぎ澄まされた感覚のみで、きっと不思議な本との出会いが待っていたはずです。

題名も作者も中身もわからない斬新な試みが大反響を呼び、1ヶ月半の期間中、売り上げは目標の約30倍に!


Book紹介案内担当:Arika


★ほんのまくら…19

 快楽の動作をつづけながら形而上学について考えること、
 精神の機能に熱中すること、それは決して下等なたのしみではないだろう。


われらの時代 (新潮文庫)われらの時代 (新潮文庫)
(1963/07/02)
大江 健三郎

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Arikaアイコン(小)1 「若き日の大江氏の過激さが輝いている―。」
官能的な世界の中で生きる青年の物語。当時の日本が戦後復興期を経て、高度成長へと至る時代、若者がひしめき、学生運動が盛んだった時代。この小説が書かれた時代が羨ましい。この時代、文学も光輝いていた。大江氏の過激さも輝いている。ことばのひとつひとつが鮮烈で、衝撃的でした。多くの現在話題とされている作家の言葉がとても軽くすら感じられる。奇をてらった言葉を使わなくても、強く印象に残った文章がたくさんありました。特に、主人公たちが右翼の行進に遊び半分で参加する場面では大江氏のパワーが発揮されていると思った。



★ほんのまくら…20

 賭けをした男が牛の体内にもぐり込む。


一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)
(1999/08/30)
バリー ユアグロー

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一人の男が飛行機から飛び降りる。涙を流しながら、靴箱いっぱいのラブレターを空中に投げ捨て…・魚を先祖に持つ女の逸話・世界で最後の煙草を持った男が、ブロンド女からマッチを手に入れようと苦労した物語・サルタンのハーレムを警備していた私が、テントの中を覗き込んで見たものとは…などなど、あなたが昨夜見たかもしれない、リアルでたのしい悪夢、149本の超短編。

出版社内容情報
ページをめくってみたら、冒頭の、「賭けをした男が牛の体内にもぐり込む。もぐり込んでみて、結局そこに居すわることにする・・・・・」という書きだしが面白いので、立読みをはじめた.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』347頁、より)
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Arikaアイコン(小)1 「1/149の出逢いを求めて。パッと開いたところを読む ―。」
ひと話が、1~2ページという短い物語がほとんどなので、パッとはじまりパッと終わる。だからパッと開いたところを読むという楽しみがあります。次々に展開していくめくるめく変な世界。大体、文庫本のカバーからしておかしい。ローソク男が、乾物の魚でヴァイオリンを弾いている…。本の内容は、夢の話。本当に見た夢のことか、夢の夢の話か、はたまた、全くの作り話か。 アメリカには時々このような変な事を考える人間が出現してくる。トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンは「自分の夢をどうしても覚えていられない僕にとって、ユアグローの小説は格好の代用品である」とコメントしているが、 毎日毎晩見る夢が毎朝目を開けた途端にそれこそ手ですくった水が流れ落ちるように記憶から抜け落ちてしまう、それがとても残念だと思っている人にとって、この本はまさに”夢”のカタログだろう。ただし、最初の何編かを読んでどうしても受け付けないと思ったら、そこで読むのは諦めた方がいい。悪夢にとりつかれるようでは元も子もないからね…。 翻訳は今が最も脂の乗り切っている柴田元幸さん、彼の翻訳だから安心できるし、原書より「いい」だと思う。 でも、あまりに翻訳のよい小説は、かえって原文も気になるものだなあ、と柴田さんの翻訳した本を読むとよく思う。





★ほんのまくら…21

 片側の窓に、高知湾の海がナマリ色に光っている。


海辺の光景 (新潮文庫)海辺の光景 (新潮文庫)
(2000/08)
安岡 章太郎

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不思議なほど父を嫌っていた母は、死の床で「おとうさん」とかすれかかる声で云った──。精神を病み、海辺の病院に一年前から入院している母を、信太郎は父と見舞う。医者や看護人の対応にとまどいながら、息詰まる病室で九日間を過ごす。戦後の窮乏生活における思い出と母の死を、虚無的な心象風景に重ね合わせ、戦後最高の文学的達成といわれる表題作ほか全七編の小説集。
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Arikaアイコン(小)1 「恥辱文学の金字塔―。」
表題作は九日間、精神病院の甘酸っぱい臭いのする部屋に、母の最期を看取るために主人公は閉じこもるという著者の自伝的作品。意識のない母親に、声をかけてあげなさいと病院の人に言われて上手く話し掛けることができなかった主人公が、何かを言ってあげたい気持ちになったときにはもう手遅れになってしまっているという場面はリアリティがある。安岡章太郎氏が小説の中で描写するいたたまれなさ、やるせなさ、いきばのなさ、やりきれなさは「恥辱文学の金字塔」とでも名付けたいくらい天下一品です。時間を交差させ、五感に訴えかけるように父への嫌悪、母への愛憎を描き切ったものすごくよくできた小説だと思いました。





★ほんのまくら…22

 肩にオウムをとまらせた少年が線路づたいに歩いてきた。


シャーロック・ホームズ最後の解決 (新潮文庫)シャーロック・ホームズ最後の解決 (新潮文庫)
(2010/01/28)
マイケル シェイボン

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声を失ったその少年には親友のオウムがいた。彼の代わりのように不思議な数列を連呼するオウムが。少年は九歳。親を失い、祖国を離れ、英国南部の片田舎で司祭の下宿屋に引き取られている。彼が巻き込まれた奇禍とは殺人事件とオウムの失踪。養蜂家の老人に司祭一家のドラ息子、謎の下宿人―。オウムはどこに?そして犯人は?ピューリッツァー賞作家による正統派ホームズもの。
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Arikaアイコン(小)1 「本格的ミステリというよりも、
老人の人間観察の深さが読み取れるホームズもの ―。」

現代アメリカ文壇の人気作家シェイボンが挑んだ本格的ホームズ・パスティーシュ(Pastiche、作風の模倣)小説。まず本書は間違いなくシャーロック・ホームズが登場する物語でありながら、原題名でも本文でも「ホームズ」という呼び名を全く使わず終始「老人」とのみ表現している所に著者のこだわりを感じさせます。物語は1944年7月、犯罪捜査から足を洗い、養蜂業に専念している89歳のホームズが、ふとしたことから巻き込まれた「最後の事件」という設定である。残念なのは親友ワトスン博士の消息について全く触れられていない点がやや気になる。89歳になるシャーロック・ホームズのハッスルぷりや覚束ない言動などがうまく表現されていて面白い。もちろん解決までの話であるが、本格的ミステリというより、人間界の理不尽さ(ユダヤ問題、動物との共生など)の巧い繰り込みはシェイボン独自な視点の自由さ(オオムの視点さえある)に趣深い純文学を感じる。この作品は老人になっているホームズという設定を楽しめるかどうかに尽きるな~と思う。ホームズものだからといっても主人公は89歳ですから派手な展開や大事件のミステリーは期待せず、老人の人間観察の深さが読み取れる“ホームズもの”として読んでいればそれなりに楽しめます。







★ほんのまくら…23

 仮に次郎としておこう。次郎は何もしていない。少なくとも今は。


死の谷’95 (講談社文庫)死の谷’95 (講談社文庫)
(2009/02/13)
青山 真治

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折り合いの悪かった兄・一郎が突然、次郎を訪ねてくる。用件は妻の浮気調査。金に困っていた次郎は気楽に引き受けるが、尾行した嫂は霧の太平洋に入水自殺した…。十年後、探偵となった次郎は同じ頃に失踪した女を捜して苦い記憶の地へ。そして東京湾を挟んだ悲しい運命の糸が。著者初のサスペンス長篇。
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Arikaアイコン(小)1 「よくできたB級映画か火サスみたいで、
通勤電車の中で読む暇つぶしとして丁度いい―。」

冒頭がほのかに虚人たち風味だったので買ってみたのだが、中身は全然違った。1995年と2005年を軸に物語が進む。1995年、不仲の兄に依頼されて兄嫁を尾行することになったプータローの次郎はある晩、濃霧に包まれた神奈川の砂浜で兄嫁を見失う。翌朝、沖で見つかったのは1本の白い手だった。それから10年後(2005年)、探偵事務所を開いた次郎はある男性から、10年前から会っていない女性を探してほしいと依頼を受ける。その女性について調べていくうち、次郎は千葉・木更津で起きた殺人事件について知ることになり…。東京湾を隔てて起きた2つの出来事が小説の後半で、橋のど真ん中で1本に繋がったよう因果関係で結び合わさる。物語の語り手である著者は、事件の真相を垣間見ようと探偵行為を続けさせて読者をサスペンスに引き込んでいくが、当の探偵はなかなか真相をのぞき見ることができない。というB級映画か火曜サスペンスとかでありそうな話ともいえなくもない…。いろいろ予想に反してはいたが、 通勤電車の中で読む暇つぶしとしては丁度いい具合のサスペンスもの。最後の方は読んでいて、ブライアン・デ・パルマ監督の映画「ファム・ファタール」をちょっと思い出した。




Arika報告書y0001おすすめ
★ほんのまくら…24

 彼の人の眠りは、徐かに覚めて行った。
 まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでいるなかに、
 目のあいて来るのを、覚えたのである。


死者の書・口ぶえ (岩波文庫)死者の書・口ぶえ (岩波文庫)
(2010/05/15)
折口 信夫

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「したしたした。」雫のつたう暗闇で目覚める「死者」。「おれはまだ、お前を思い続けて居たぞ。」古代を舞台に、折口信夫が織り上げる比類ない言語世界は読む者の肌近く幻惑する。同題をもつ草稿二篇、少年の日の眼差しを瑞瑞しく描く小説第一作「口ぶえ」を併録。
----------------------------------------------------------------------------------------------------Arikaアイコン(小)1 「記憶に残る水の音… 『死者の書』
濃密ねっとりした男色空気が色っぽい…『口ぶえ』」

『死者の書』は、持統女帝に処刑されて二上山に葬られた滋賀津彦(大津皇子)の霊魂が目覚める話と、二上山の峰の間に現れた阿弥陀仏に導かれ、当麻寺に身を寄せた藤原南家郎女(中将姫)が蓮糸で曼荼羅を作成する話とが重なり合った複雑な内容の小説。読者を捉える印象的なまくらに反して、その後の難関さ・・・。古い言葉で書かれていて、会話も貴族言葉(?)で、その上、物語の構成も複雑ときてるので内容がまったく頭に入ってこなくて、わりと流し見な感じで読んでしまった。後で注釈を読み直したら人間関係をぜんぜん理解できていないのに我ながら驚いた。小説の内容もさりながら、折口信夫氏のオノマトペ(擬態語・擬声語)の感覚の凄さ。「した した した。」という墓の中で水が滴る音。「ほほき ほほきい ほほほきい―。」という鶯の鳴き声。「つた つた つた。」という闇の中の足音。いずれも強烈に記憶に刻まれる。注釈無しだと難しい所が多々あるけれど、でも映像化になったらきっと面白い作品になるだろうなと思った。 それに比べて「口ぶえ」は一読で、腐女子的に好き。同性愛者だったと言われている折口氏の少年から見た男色からの肉欲に対する嫌悪感や相手の視線に一種の心地よさを感じる気持ちの変化を絶妙に描いています。少年の潔癖さと汚穢への愛着、愛しい人の為に清くあらねばならないが欲望は汚穢にも塗れているという矛盾を生きる10代前半の恋に共感した。 少年の不安定な心をさらりと鮮やかに描いていると同時に、男性の身体を耽美に描写している、流石、自伝的小説と呼ばれてるだけはある生々しさでした。 ・・・そうそう、”なんで表紙がエジプトなのん”、という疑問があったけど解説にて判明。
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