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【おすすめBOOKフェア】ほんのまくらフェア25~30

kage

2014/06/04 (Wed)

Arika(フェア)1

紀伊国屋「ほんのまくらフェア」25~30

ほんのまくら2a

本の出だしの文章=「まくら」と呼びます。

有名なものならたくさんある。

「国境のトンネルを抜けると~」…by『雪国』川端康成

「ゆく河の流れは絶えずして~」…by『方丈記 』鴨長明

「メロスは激怒した」by『走れメロス』太宰治

「桜の樹の下には~」by『桜の樹の下には』 梶井 基次郎

「スプリットタンって~」・・・by『蛇とピアス』金原ひとみ


このフェアは、単行本に、冒頭の一文の『まくら』のみ印刷したカバーをつけてビニールで封印。

オリジナルカバーに載っているそれぞれの「まくら」に何を感じ取ったのでしょうか?

それはもう本当に研ぎ澄まされた感覚のみで、きっと不思議な本との出会いが待っていたはずです。

題名も作者も中身もわからない斬新な試みが大反響を呼び、1ヶ月半の期間中、売り上げは目標の約30倍に!


Book紹介案内担当:Arika


★ほんのまくら…25

 気がついたとき、熊は頭をおさえてすわっていた。


頭のうちどころが悪かった熊の話 (新潮文庫)頭のうちどころが悪かった熊の話 (新潮文庫)
(2011/11/28)
安東 みきえ

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頭を打ってすべてを忘れてしまった熊が探しはじめたのは、愛するパートナー、レディベアだった。彼女は乱暴だったけど、熊はそんな彼女に会いたかったのだ―動物世間のよもやま話に奇妙で不思議な現実がみえ隠れ、これって、私たちのこと?生き物世界の不条理がキュンと胸にしみる、シュールで痛快、スパイシーな7つの寓話集。イラスト全14点収録。話題のベストセラーを文庫化。
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Arikaアイコン(小)1 「人生について考える7つの動物寓話―。」
この本は、年齢によって、いろいろな気づきがありそうな、いい本だ。動物を主人公にした短編寓話全7話。熊にトラ、カラス、ヘビ、おたまじゃくし、鹿など、いろんな動物が出てきます。それぞれの動物がそれぞれに暮らしている日々の中で、いろんなことを考えます。どれもシンプルで、勇気と弱気という相反する気持ち、それらを支える愛に満ちている。子供向けの童話だが、とてもリアリティのある話ばかりで読みながらドキッとさせられた。そうそう、こんなことあるあると共感しながら、無意識のうちに従来の童話のようなハッピーエンディングを想像していると次にドカーンとどんでん返しが待っていたりする。表紙のイラストからもわかるように、結構、シュールかつシニカル。死の影さえ、チラチラよぎる。かといって、決してグロテスクではなく、どこか子供の透徹した眼差しで見た世界のような、どこか不思議で懐かしさを感じさせる。ジャンルとしては児童書になるみたいですが、これは児童じゃなくて、大人が読んだほうが面白いかも。私は特に『いただきます』と『りっぱな牡鹿』は好きだったけど、次の一行がどう展開するのか、期待させられながら、最後まで飽きることなく読めました。イラスト、デザインとも、内容によく合っており、絶妙の本だと思った。





★ほんのまくら…26

 昨日、ヴォーンは最後の自動車事故で死んだ。


クラッシュ (創元SF文庫)クラッシュ (創元SF文庫)
(2008/03/24)
J.G. バラード

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六月の夕暮れに起きた交通事故の結果、女医の目の前でその夫を死なせたバラードは、その後、車の衝突と性交の結びつきに異様に固執する人物、ヴォーンにつきまとわれる。理想通りにデザインされた完璧な死のために、夜毎リハーサルを繰り返す男が夢想する、テクノロジーを媒介にした人体損壊とセックスの悪夢的幾何学を描く。バラードの最高傑作との誉れも高い問題作、初文庫化。
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Arikaアイコン(小)1 「 クラッシュと死、
交通事故に性的オルガズムを抱く精神病理―。」

本作は、1973年発表のいわゆるテクノロジー作品群のひとつで激変する社会の中でもがく現代人の精神病理を切った作品。潰れて血まみれとなった車体。無惨な姿となって回収される犠牲者や朦朧とし半死状態で救助される人々…。そのシーンを観察し記録し性の衝動と死への憧憬が互いに侵食しあい融解していくさまを妄想し、己のエクスタシーを追求するという自動車事故に魅せられた倒錯者たちを描かれています。交通事故に性的欲望を抱く人間っているのかなってはじめは思ったけど、深夜やっているF1を見ていてドライバーのコーナリングのテクニックに一種の興奮度を感じ魅入ってしまう事に置き換えるとテクノロジーとか人体改造って確かに欲望の対象となる気がします。でも、クラッシュと死という性的オルガズムに憑りつかれてしまった現代人は何処へ行けばいいのだろうね。そして最終的に何処に辿りつくのだろう。もう30年以上前になる作品ので、性的な描写は当時はインパクトはあったんだろうが、今はそれほどでもありません。テクノロジーや死にとり憑かれた人間って極めて現代的なテーマだと思う。





★ほんのまくら…27

 昨日、心当たりのある風が吹いていた。
 以前にも出会ったことのある風だった。


昨日 (ハヤカワepi文庫)昨日 (ハヤカワepi文庫)
(2006/05)
アゴタ クリストフ

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村の娼婦だった母の子として生まれたトビアス。ある事件を契機に名前を変え、戦争孤児を装って国境を越えた彼は、異邦にて工場労働者となる。灰色の作業着を身につけ、来る日も来る日も単調な作業に明け暮れるトビアスのみじめな人生に残された最後の希望は、彼の夢想のなかにだけ存在する女リーヌと出会うこと…。傑作『悪童日記』三部作の著者が、みずからの亡命体験をもとに幻想と不条理を交えて綴る不可能な愛の物語。
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Arikaアイコン(小)1 「彼女は作品そのものから、
「亡命者の言葉」で語りかけてくる―。」

これまで同様に「亡命」「戦争」「故郷」「言葉」というテーマを巡りながら、人生に対する深い哀しみと、何があろうと私は書くという強い意志の感じられる文章で淡々と独特の世界を描き出しています。孤独の理由は主人公のようにドラマティックではないにしろ、現代の日本に暮らす私たちのなかにもこんな虚無感や絶望感を抱え、うんざりするほど長い残りの人生を前に途方に暮れている人は少なくないと思います。クリストフは誰もが感じる孤独というものを、彼女にしかできない方法で、眼を背けられないひとつの形に作り上げて、”果てしない絶望と孤独が続くにしても、人間はとにかく生きなければならない、自分の人生を生きなければならないんだ!!という強い信念で訴えているように感じました。また、 最後の1ページのそっけなさが、重い。心の中の何かがスコンと落っこちてしまったような、悲しいのか虚しいのかわからない、不思議な余韻が漂う終わり方。読後、途方にくれた、という言葉がぴったりくるような作品、でも心に響く作品です。





★ほんのまくら…28

 昨日の葬式はとてもうまく行った。


葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
(1993/01)
松浦 理英子

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葬式に雇われて人前で泣く「泣き屋」とその好敵手「笑い屋」の不吉な〈愛〉を描くデビュー作はじめ3篇を収録。特異な感性と才気漲る筆致と構成によって、今日の松浦文学の原型を余すところなく示す幻の第一作品集。待望の文庫化。
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Arikaアイコン(小)1 「19歳ならではの茫漠とした世界感覚 ―。」
表題作はいかにも19歳の若書きの処女作という印象。「葬儀の日に」は葬式における"泣き屋"の私と、対になる存在として描かれる"笑い屋"の彼女。対照的に見えるけれど、実は内は驚くほどはアイデンティが似ている。双生児のように鏡の中と外のようにひどく惹かれ合う。なぜ彼女達が惹かれ合うのか? そもそも彼女達は一体何者なのか? 読み進めるにつれて一種ビアン風のナルシスティックな双子的関係の潔癖さ、完璧さ、自閉性が際立ち感じてしまう。これは簡単に説明すると、この世界には自分の片割れとも言える存在がいるっていう話で、正直これの解説は難しい。わたしとあなたは川の対岸同士で、求め合うと川を潰すことになるっていうことが書いてあったけど、最終的にひとりの存在になったっていうのは、人称が不自然に入れ替わることからも、私と彼女は同一の自己らしいと察するが、普通に読むと自身に向き合える「私」と、そうでない周囲との差異が書かれてるのかしら、とも思った。この感覚は、特に十代の頃にありがちな、狭い世界での無防備な対人関係に似ていている。波動や感覚の合う(と思われる)相手と知り合ってしまったとき、その相手との共有世界に夢中になるか、離れるかであるが、夢中にハマった人はこの作中の「私」のように感じるだろうし、周囲の人たちは作中の「仲間たち」のような視線で見ているだろう。当事者は相手を鏡のように、我が事のように感じ、それで満たされ感じるのだけれど、その完全性ゆえに鏡の向こうの相手に異存し囚われ、他に向き合えないスパイラスにハマり込んでしまう。そんな関係がいつまでも続く訳でもないのに…と思うのは、いかにも大人の感覚で、そういう意味では怖い小説だとおもうけど、個人的におススメは「肥満体恐怖症」。母親が肥満だったせいで、肥満している女性を生理的に嫌悪するようになってしまった女子大生。が、大学に入ったら、なんの因果か、デブの上級生三人と同室の寮に放りこまれ、しかもネチネチと嫌がらせをされるという、設定。完全にギャグ(笑)であるが、しかし、物語がすすむにつれ、しだいに主人公のマゾっぽい性癖が明らかになっていく、という、なんとも素晴らしい話(笑)。「ロースハムのブロックを思わせる手が差し延べられた。触れるとぬるぬるするのではないかと案じつつも、握手に応じた。掌は脂ぎってはいなかったが妙に熱く、獣じみた力で唯子の手を握り締めた。唯子は窒息しそうになった。」。そういう事をサラリと文章として書いてのけるのはやっぱり19歳ならではの感覚だと大笑いした。





★ほんのまくら…29

 「きみがあらゆるものを恐れているのなら、この本を読みたまえ。」


マダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫)マダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫)
(2006/09/07)
バタイユ

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「ある街角で、不安が私に襲いかかった。汚らしく、うっとりするような不安だ」極限のエロスの集約。戦慄に満ちた娼婦との一夜を描く短編「マダム・エドワルダ」に加え、目玉、玉子…球体への異様な嗜好を持つ少年少女のあからさまな変態行為を描いた「目玉の話」を収録。
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Arikaアイコン(小)1 「美しく、狂おしい世界。 変態で、狂気のあふれる世界。
それらがこの本からにじみ出ている―。」

「マダム・エドワルダ」は、わずか27ページの中に、人間の極限が、人間がおのれの限界を超え、神になるとはどういうことかが描かれている。そして、あまりにも衝撃的な「目玉の話」。とくに、バタイユの一生を決めたという彼の父親の言葉(135ページ)は、これこそ地獄からの悪魔の声と呼ぶべきものだ。バタイユを語るとき、「スキャンダラス」「変態」「エロティシズム」という言葉。けれど、根底にあるのは、みんなが当たり前に服を着ている現実に、自分だけ裸でいるような不安感の様に周囲となじめない、戻れない、だけど服を着ることは自分にとってひどく難しいというそんな不安と孤独が、両作品の中に流れているように思える。バタイユの挑戦的な言葉は「理屈」では理解できない。彼の言葉は、感覚的な「詩」であり、それを「読む」のではなく、「感じる」ことだからこそ彼はこの本の冒頭で、”きみがあらゆるものを恐れているなら、この本を読みたまえ。”と読者に言う。エロティシズムとは何かを彼は語っているのではなく、エロティシズムの先にあるものこそ、ある真実だと彼は信じているて語りかけている。エロティシズム論を展開する哲学者の書いた小説なんて、面白くないという先入観を取っ払ってまずは読んでみると、こんなに面白い(しかも、薄い)本をもっと早く読まなかったのだろうと後悔するかもしれない。ただし、普通に読めばただの変態描写満載の本なので、それだけは要注意!!





Arika報告書y0001おすすめ
★ほんのまくら…30

 キムラサクヤは生まれる前から間違っていたのか?


性交と恋愛にまつわるいくつかの物語 (朝日文庫)性交と恋愛にまつわるいくつかの物語 (朝日文庫)
(2010/11/05)
高橋源一郎

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日本一「もてない男」は、時には有名大学を、時にはスターになることを目指し、女にもてる道を模索する。そして「JJ」をこよなく愛し、性交経験3回の「もてない女」と出会ってしまう。ふたりの欲望の果てに何がある?性交についてぐるぐる考えてしまうユーモアたっぷりの物語。
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Arikaアイコン(小)1 「性交にまつわる苦しみ、落胆、苦悩を
”包み込んで優しく今日のところは埋葬する”一冊」

『キムラサクヤの「秘かな欲望」」、マツシマナナヨの「秘かな願望」』が129ページと半分の分量を占める。内容としては「モテる」が長年の目標の、まったく容姿も頭脳もない、もてない要素の結集のキムラサクヤ、と太っていて若くもなくブサイクで、JJのモデルを眺めることによってがん末期患者と同じ心理行程をたどる、美も頭脳も金も持たないマツシマナナヨのそれぞれの欲望、と願望。日々メディアで研究し妄想するその2人が、欲望の追求の果てに、とんでもなく下らない状況で出会い、どうしたら素敵な恋愛と性交をすることができるのか……というもの。著者からのコメントを載せると、「誰も読んだことのない「恋愛小説」を書こうと思った」。確かに、誰も読んだことのないちゃんとした「恋愛小説」だとは思います。ただし、性交と恋愛にまつわるか、と言えばまつわる、けれども、性交と恋愛にまつわる物語か、と言われるとそうではなかった。正直言って途中で読むのをやめようかと考えたし、ではなぜ読み続けたかというと「高橋源一郎を読むためには忍耐が必要」で「高橋源一郎の文学に出会いたいなら最後まで読む」という鉄則が途中から芽生え始めたから。 総合的な感想として、長年、出会いがなく処女と童貞を守り続けてきた方の性交にまつわる苦しみ、性交にまつわる落胆、性交にまつわる自分に対する苦悩、を「包み込んで優しく今日のところは埋葬する」という柔らかティッシュ的一冊ではある。

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