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【おすすめBOOKフェア】ほんのまくらフェア61~66

kage

2014/06/15 (Sun)

Arika(フェア)1

紀伊国屋「ほんのまくらフェア」61~66

ほんのまくら2a

本の出だしの文章=「まくら」と呼びます。

有名なものならたくさんある。

「国境のトンネルを抜けると~」…by『雪国』川端康成

「ゆく河の流れは絶えずして~」…by『方丈記 』鴨長明

「メロスは激怒した」by『走れメロス』太宰治

「桜の樹の下には~」by『桜の樹の下には』 梶井 基次郎

「スプリットタンって~」・・・by『蛇とピアス』金原ひとみ


このフェアは、単行本に、冒頭の一文の『まくら』のみ印刷したカバーをつけてビニールで封印。

オリジナルカバーに載っているそれぞれの「まくら」に何を感じ取ったのでしょうか?

それはもう本当に研ぎ澄まされた感覚のみで、きっと不思議な本との出会いが待っていたはずです。

題名も作者も中身もわからない斬新な試みが大反響を呼び、1ヶ月半の期間中、売り上げは目標の約30倍に!


Book紹介案内担当:Arika


★ほんのまくら…61

 ながく庄内平野を転々としながらも、
 わたしはその裏ともいうべき肘折の渓谷にわけ入るまで、
  月山がなぜ月の山と呼ばれるかを知りませんでした。


月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)
(1979/10)
森 敦

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出羽の霊山・月山を背景に、閉ざされた山村で村人と暮しをともにする一人の男が知った比の世ならぬ幽冥の世界…芥川賞の表題作ほか姉妹篇「天沼」など七作を収録
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Arikaアイコン(小)1 「雪に閉ざされた山奥の村で見た夢幻」
森敦の東北・山形・庄内地方を放浪した体験を元に、書かれた作品です。山を中心に据え、そこで、暮らす人々の営み、山形庄内地方の空気、普通の生活を送る人間の崇高さ、生まれた土地の自然との関わりなどが描かれています。庄内地方の村人の生活を通して、人間を語っています。文章も良く、あっという間にこの世界に引きこまれていく、そんな文体です。何が起きるかわからない始まり。そして淡々と描かれる村での暮らし。今は見られない風俗・習慣も描かれている。ストーリーがあるわけではなく、主人公の心理の微妙な移り変わりだけで読ませる。この物語がすごいのは、生活感はとてもあるのですが、読み進めていくうちに虚実の境目が分からなっていくところである。理性が雪の中に隠された人々の歴史を受入れていくと、段々にファンタジーになっていくという、夢幻のような世界がこの物語に展開しています。




Arika報告書y0001おすすめ
★ほんのまくら…62

 何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
 なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。


太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05/30)
森見 登美彦

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私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

著者紹介・・・・・森見登美彦[モリミトミヒコ]
1979(昭和54)年、奈良県生れ。京都大学農学部大学院修士課程修了。『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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Arikaアイコン(小)1 「もてない超真面目な京大生4人の
悶々と日々懊悩する底辺インテリ馬鹿小説(褒め言葉)

現役京大生(正確には院生)が書いた書物だけにこれぞ京大生の生態が思う存分描かれている。ストーリーそのものはもてない京大生4人組の滅茶苦茶ではあるが、きっちりと勉強をして、思索にも十分ふけったことは間違いない学生生活の中で、案の定、全くもてない彼らの一人主人公の「私」の失恋を核に、それぞれのもてなくて、理屈っぽくて、それでいて妙に純粋で、憎めない彼らの学生生活が描かれているだけであり、『太陽の塔』という題名も、主人公が惚れた女性、水尾さんがどういうわけか太陽の塔を好きでたまらないということから付けられたもの。全編を通じて言えることは超真面目な4人組がいつも失敗ばかりする、それでいてその失敗には何かと理屈が付けられ、それがまた新たなユーモアを誘い、登場人物への愛情を掻き立ててくれる。インテリストーカーをこれほど愛すべき存在として描出する筆力とバランス感覚は見事としか言いようがない。インテリのマイナス要素を作品内でプラス要素に転換している。文体が面白く、単なる思いつきだけで、ここまでの長篇を書ききれるものではない。確かな文章力、豊富な語彙、知識、教養がバックボーンにあって初めて書ける馬鹿小説。



★ほんのまくら…63

 なんてくせえやつらだ。


地下鉄のザジ (中公文庫)地下鉄のザジ (中公文庫)
(1974/10/10)
レーモン・クノー

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Arikaアイコン(小)1 「パリの低俗な人たちのドタバタ喜劇。
この作品に教訓はないが、快楽ならたっぷりある。 」

地下鉄に乗ることを楽しみにパリへ出てきた少女ザジが主人公。しかし地下鉄はスト中で利用できず、そこからザジの、決して目的に辿り着かない物語が始まる。女装バーで働く叔父さん、美しいその妻(?)、複数のアイデンティティーを往還する怪人など、絢爛な登場人物は荒唐無稽に見えながらも、パリそのもののエッセンスを味わわせてくれる。上品な文体の中に蠢くパリの低俗な人たちのドタバタ喜劇が面白い。ページが進むにつれてそれらの登場人物や作品世界は、徐々にほころびはじめ、脆さと美しさとを見せていく。このほころびの拡大こそがこの作品のだいご味!! 後に残るのは、エンディングとも言えないエンディング(オチはついている)と崩壊感と、何よりも「あー、楽しかった」という感覚。子供の頃、思いきり遊んだ後で感じた疲労と気持ちよさがそこにある。





★ほんのまくら…64

 において、約、九割、犠牲者の、
 ほとんど、いつも、地面に、横たわる者、としての、
 必死で持ち上げる、頭、見せ者にされて、である、
 攻撃の武器、あるいは、その先端、喉に刺さったまま、あるいは......


文字移植 (河出文庫文芸コレクション)文字移植 (河出文庫文芸コレクション)
(1999/07)
多和田 葉子

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現代版聖ゲオルク伝説を翻訳するために火山島を訪れた“わたし”。だが文字の群れは散らばり姿を変え、“わたし”は次第に言葉より先に、自分が変身してしまいそうな不安にかられて…言葉の火口へあなたを誘う魅力あふれる代表作。
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Arikaアイコン(小)1 「現実と翻訳の物語を行き来する不思議で難解な物語-。 」
カナリア諸島の島の1つが物語の舞台。そこの人々が話す言葉はスペイン語だ。そこで主人公は、ドイツ語で書かれた"Der Wundepunkt im Alphabet"を日本語に翻訳している。しかし言葉と格闘するうちに次第に解体していく・・・。テーマの1つは言語及び思考であり、互いの言語構造が持つ齟齬である。主人公は締切の切迫感に追われ、また名指すことのできない諸々の状況や、訳のわからない人物たちとの遭遇に悩まされていく。ちなみに彼女が訳している物語とは、騎士ゲオルクが龍を倒して姫を救うという話。島には「ドラゴン風」というものが乾かしているらしい。翻訳・解釈という作業の難しさを、詩的実験的な文体でごりごりと書いていく、という感じでしょうか。島を散策しながら出会う人や頭の中に思い浮かぶことと、外国語をそのまま文節毎に逐語訳した訳文が交互に重ねられ、不思議な雰囲気を醸し出している。翻訳をするときの精神のゆがみが小説に昇華したような魅力がある。タイトルの「文字移植」や装丁からSFっぽいものを感じていたが全然そんなことはなく、平たく言ってしまえば「翻訳」が大きなテーマだという事だけは理解出来た。感想としては、幻想文学に近い気がするんだけど、なんか違うような小説らしくない小説。しかし、不思議なことに、日本語の中に私の知らない日本語が入り込んでくる違和感と想像力がフルに必要という疲れる要素で新鮮だった。




★ほんのまくら…65

 人魚は南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。
 北の海にも棲んでいたのであります。


小川未明童話集 (新潮文庫)小川未明童話集 (新潮文庫)
(1961/11/13)
小川 未明

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人間はこの世の中で一番やさしいものだ──ひとり寂しく生きた人魚はそれを聞いて、自分の娘を人間界に産み落とします。夢と希望を託して。美しく成長した娘がたどる運命は、いったいどんなものでしょうか? 数ページのお話のそれぞれがあなたの心の新たなページになる。とっても優しいのにとっても意地悪。そんな25編の小川未明の童話は日本が世界に誇れるすばらしい作品です。
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Arikaアイコン(小)1 「素晴らしき日本的なノスタルジーの数々。大人も楽しめる童話集。 」
『赤いろうそくと人魚』で有名な小川未明氏の童話集。25編の短編が収録されています。「月夜と眼鏡」「眠い町」「雪くる前の高原の話」「負傷した線路と月」「遠くで鳴る雷」「島の暮れ方の話」etc。無駄がなく、力みがなく、サラサラと流れていく文章の数々。言葉は情景を描き、空気も作り出します。童話集というと一般的に子供向けに感じますが、これは子供のみならず、大人も楽しめる童話集だと思います。あまりに美しい日本語と文章のの数々に、自分の日本語に恥じ入りました。多くの人々に読んで頂きたいですが、特にお子さんにはこういう日本語を音読しましょう。






★ほんのまくら…66

 眠られぬ夜のために、とっておきの睡眠誘導術を伝授するとしよう。


笑う月 (新潮文庫)笑う月 (新潮文庫)
(1984/07)
安部 公房

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思考の飛躍は、夢の周辺で行われる。快くも恐怖に満ちた夢を生け捕りにし、安部文学成立の秘密を垣間見せる夢のスナップ17編。
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Arikaアイコン(小)1 「非日常的な世界の中での日常。安部さんの思想ノートのような一冊」
この文庫には、17編の文章がおさめられている。なかでも「公然の秘密」に於ける、餓えた仔象の物語は印象的だった。不気味だし、グロテスクでもあるのだが、なにか安部公房というひとの発想の根幹のようなものに触れた気がして、ぞくぞくさせられ興味が湧きました。この本は、夢を見ない人、夢に興味のない人には、何の価値もないだろう。一方、作者同様、夢に魅了された人間には、示唆に富む一冊となるだろう。眠れない夜をさらに眠れなくさせてしまうような安部さんの思想ノートのような一冊です。


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