【おすすめBOOKフェア】ほんのまくらフェア79~84

2014/07/25 (Fri)

紀伊国屋「ほんのまくらフェア」79~84

本の出だしの文章=「まくら」と呼びます。
有名なものならたくさんある。
「国境のトンネルを抜けると~」…by『雪国』川端康成
「ゆく河の流れは絶えずして~」…by『方丈記 』鴨長明
「メロスは激怒した」…by『走れメロス』太宰治
「桜の樹の下には~」…by『桜の樹の下には』 梶井 基次郎
「スプリットタンって~」・・・by『蛇とピアス』金原ひとみ
このフェアは、単行本に、冒頭の一文の『まくら』のみ印刷したカバーをつけてビニールで封印。
オリジナルカバーに載っているそれぞれの「まくら」に何を感じ取ったのでしょうか?
それはもう本当に研ぎ澄まされた感覚のみで、きっと不思議な本との出会いが待っていたはずです。
題名も作者も中身もわからない斬新な試みが大反響を呼び、1ヶ月半の期間中、売り上げは目標の約30倍に!
Book紹介案内担当:Arika
![]() | 言葉の標本函 夢のかたち―渋澤龍彦コレクション 河出文庫 (2000/08) 渋澤 龍彦 商品詳細を見る |
内容説明
古今東西の文学作品や歴史的著作の中から、夢、オブジェ、エロティシズムなど、一巻一テーマで輝きと驚異に満ちた文章の数々を採集した「コレクション」の第一巻。自由な断章のアンソロジーの形で、新しい感覚と知へ向けてコラージュする「言葉の博物館」の「夢」編。語りえぬ不思議を語ろうとする、多彩多様な夢の記述の一大絵巻。
目次
世界の終り―マリ・バシュキルツェフ
夢の季節―プリニウス
眠る女のアリバイ―コクトー
ゴッフレードの夢―タッソー
夢にあらわれたラウラ―サド
見るならば面白い夢―ニーチェ
大孔雀王の夢―明恵
キャルパーニアの夢―シェイクスピア
ペネロペイアの夢―ホメーロス
デ・ゼッサントの夢―ユイスマンス〔ほか〕
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澁澤龍彦編による、各分野の著名人、学者、詩人が実際に見たものや、小説に描かれたものなど、ありとあらゆる"夢"がこれでもかと詰め込まれた一冊。宗教家の「夢」は説教じみて嘘臭く、狂人の謗りを受けた人物の「夢」は、ちょっぴり狂ってる。未見の記述も多々あり、好奇心は満たされる。 ずいぶんマニアックな内容だなあ。夢日記つけるとおかしくなるって本当なんですかね。一つ一つは短いので、寝る前にちびちびと晩酌でもするように読んでみた。今夜は私はどんな夢をみるんだろう。

![]() | 顔のない裸体たち (新潮文庫) (2008/07/29) 平野 啓一郎 商品詳細を見る |
内容説明
地方の中学教師・吉田希美子が出会い系サイトで知り合ったのは、陰気な独身公務員・片原盈だった。平凡な日常の裏側で、憎悪にも似た執拗な愛撫に身を委ねる彼女は、ある時、顔を消された自分の裸体が、投稿サイトに溢れているのを目にする。その時、二人は…。人格が漂流するネット空間を舞台に、顰蹙の中でしか生きられない男女の特異な性意識と暴力衝動に迫る衝撃作。
著者紹介
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975(昭和50)年、愛知県生れ。京都大学法学部卒。’99(平成11)年、大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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表題は、モザイク処理で顔を消された写真を指している。目立たない、恋愛も性的にも経験の少ない中学教師が出会い系サイトで知り合った男と交渉を重ねる。希美子のHNはミッキー。男はミッチー。男の乱暴なセックスに戸惑いながらも縛られてみたり写真を撮られてみたり野外露出をしてみたりするミッキーは希美子とは別の人格だ。人は職場で、得意先で、恋人の前で、ネットの中で、それぞれの人格を演じてるところがある。デジカメの普及とともに、投稿サイト、投稿雑誌の類にはそうした「顔のない裸体たち」が氾濫するようにもなった。ネット社会という匿名性の殻の中で演じられる変態プレイは、決してリアルと訣別した行為ではあり得ずにエスカレートしつつ、滑稽な現実とショートしていく。結局、欲望というのは行きすぎれば暴力になるという結末なのだろう。ネット上の顔にモザイクがかかったエロ写真。モザイクが掛かると別人格だから大胆になれるというのはギリギリ理解出来るが、顔さえばれなければ何万・何十万の人間にも裸を見せられるか、逆に言うと「自分」というもののアイデンティティーの唯一は顔だけで、首から下は自分の所有物でもなく他人のものという考え方なのだろうか? しかし現実は画像解析すれば本人確認出来るしサイトに出た物は世の中から消す事は不可能である。読後、ネット社会に満映してるギリギリの性の怖さを感じてならなかった。
![]() | 飲食男女(おんじきなんにょ)―おいしい女たち (文春文庫) (2006/04) 久世 光彦 商品詳細を見る |
内容説明
食べることは色っぽい。味わうという言葉も、口に合わないという言い方も、考えてみれば男と女の味がする…。湯豆腐、苺ジャム、蕎麦、桃、とろろ芋、お汁粉、煮凝、ビスケット、無花果、おでん。食べもののある風景からたちのぼる、遠い日の女たちの記憶。ひたむきで、みだらで、どこか切ない19の掌篇集。
著者紹介
久世光彦[クゼテルヒコ]
昭和10(1953)年、東京生まれ。東京大学文学部美学科卒業後、東京放送に入社。「七人の孫」「時間ですよ」「ムー一族」「寺内貫太郎一家」等のヒットドラマを手がけ、54年退社。カノックスを設立後、演出家、映画監督、作詞家として活躍。平成4年、「女正月」他の演出で芸術選奨文部大臣賞受賞。5年、「蝶とヒットラー」で第3回ドゥマゴ文学賞受賞。6年、「一九三四年冬―乱歩」で第7回山本周五郎賞受賞。9年、「聖なる春」で芸術選奨文部大臣賞受賞。13年、「蕭々館日録」で第29回泉鏡花文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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飲食を題材にした男と女の艶っぽい短編集。人は生きる為に食べるのか、食べるために生きるのか。性欲か食欲かを選ぶのは究極の二者択一である。何故なら両者は切っても切れない糸で繋がれた関係だから。食べ物を題材にした小説は多々あるけれど、いまの小説家でこの手の題材をなまめかしく、ぎりぎりにキワドク品のある文章で描ききれる人は、そういないだろう。ジャム、とろろ芋、無花果・・。食べ物の淫靡な誘惑が、男女のほのかなつながりのなかに上手にとりこまれて、はんなり上品に香り立つ色香。男の究極の妄想のような物語でありながらも、主人公のプレイボーイっぷりと退廃的な雰囲気に憧れとも嫉妬ともつかないような感情が沸いてくる。特に腐りかけの桃のイメージが強く印象に残った。
![]() | 肉体の悪魔 (新潮文庫) (1954/12/14) ラディゲ 商品詳細を見る |
内容説明
青年期の複雑な心理を、ロマンチシズムヘの耽溺を冷徹に拒否しつつ仮借なく解剖したラディゲ16─18歳のときの驚くべき作品。第一次大戦のさなか、戦争のため放縦と無力におちいった少年と人妻との恋愛悲劇を、ダイヤモンドのように硬質で陰翳深い文体によって描く。ほかに、ラディゲ独特のエスプリが遺憾なく発揮された戯曲『ペリカン家の人々』、コント『ドニーズ』を収める。
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残酷さと純粋さの心理を表現した恐るべき作品」
一見濃厚な恋愛は、その炎の下でエゴイズムが渦巻いている。本書では徹底的にそうした炎を燃え立たせる内なる動機を暴き立てる。不誠実な男の内心を責めたくなるが、しかしそれが人間としての本然なのだろうと思う。内なる動静は何事もなかったかのように表面上の平和な世界に収束していく。こんなシニカルなハッピーエンドは初だった!淡々とした描写は一見退屈にみえるが、それもラストへの布石でしかすぎない。 少年ゆえの大胆さ、臆病さ、無責任さがリアルに描かれているこの小説を10代で書き上げたことには驚くけれど、これは10代でなければ書けない主人公少年の無責任で不安定な恋愛心理描写でもある。でも読んでいて正直腹が立ったのはジャックの立ち位置があまりに可哀想すぎる。あとがきに、ラディゲは神童扱いされるのを嫌ったとあるけれど、やっぱり年齢を考えるとすごいと思う。しかも無理に背伸びしている感じもなくて、まさに主人公の年齢ならそうするであろう言動や思考など、自然に描いている。
![]() | 地下室の手記 (新潮文庫) (1970/01/01) ドストエフスキー 商品詳細を見る |
内容説明
極端な自意識過剰から一般社会との関係を絶ち、地下の小世界に閉じこもった小官吏の独白を通して、理性による社会改造の可能性を否定し、人間の本性は非合理的なものであることを主張する。人間の行動と無為を規定する黒い実存の流れを見つめた本書は、初期の人道主義的作品から後期の大作群への転換点をなし、ジッドによって「ドストエフスキーの全作品を解く鍵」と評された。
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当時の落ちぶれた中産階級の青年ってこんなカンジなんだろうかと思いながら読み進めた。頭でっかちだけど、度胸もない。そして、お坊ちゃま暮らしできるほどのお金もないのに、プライドだけは富士山のように高い!!傲慢で嘲笑されることがキライで。じゃ、腹が立つんだったら、働こうか!と思うけど文句しか言わないんだもん。はした金のためにアクセク働くだけのもプライドが許さない。こんなんばっかりいたら、そりゃロシア革命も起きるのが当然だわ(笑)、ではない。何故なら現代の日本社会に目を向けたとき、この気持ちが分かる若者は沢山いそうだなと思った。お金もなく、コミュ力もないけど、プライドだけは高くて可愛げもないから人から愛されない。過剰な自意識によって人間関係の悪循環に陥って勝手に傷ついて縮こまってしまい地下室(自分の頭の中の世界)に引きこもるという悪循環。ドストエフスキー本人は服役経験があるからこそのこの「地下室の手記」と感じる。賛否両論が多い作品だが、社会に上手く適合できない若者の心が恥ずかしいくらいさらけ出されて、世に伝えようとした心は評価はしてほしいなとはせつに思う。
![]() | シーシュポスの神話 (新潮文庫) (1969/07/17) カミュ 商品詳細を見る |
内容説明
神々がシーシュポスに科した刑罰は大岩を山頂に押しあげる仕事だった。だが、やっと難所を越したと思うと大岩は突然はね返り、まっさかさまに転がり落ちてしまう。―本書はこのギリシア神話に寓してその根本思想である“不条理の哲学”を理論的に展開追究したもので、カミュの他の作品ならびに彼の自由の証人としてのさまざまな発言を根底的に支えている立場が明らかにされている。
目次
不条理な論証(不条理と自殺;不条理な壁 ほか)
不条理な人間(ドン・ファンの生き方;劇 ほか)
不条理な創造(哲学と小説;キリーロフ ほか)
シーシュポスの神話
付録 フランツ・カフカの作品における希望と不条理
著者紹介
カミュ[カミュ][Camus,Albert]
1913‐1960。アルジェリア生れ。フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。高等中学の師の影響で文学に目覚める。アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。またアマチュア劇団の活動に情熱を注ぐ。1942年『異邦人』が絶賛され、『ペスト』『カリギュラ』等で地位を固めるが、’51年『反抗的人間』を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。以後、持病の肺病と闘いつつ、『転落』等を発表。’57年ノーベル文学賞受賞。交通事故で死亡
清水徹[シミズトオル]
1931年、東京生れ。東大仏文科卒。明治学院大学教授。『廃墟について』等の著書、カミュ、ビュトール『時間割』(クローデル賞)等の訳書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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カミュが自らの文学の主題である不条理について論じた、哲学的エッセイ。不条理という言葉は、カミュについて語るときにほとんど必ず使われる言葉だが、この作品では、その「不条理」について語っています。論述内容はともかくとして、若きカミュの情熱が迸る熱い文章は感動的です。 生きていくと必ずぶつかる問題「不条理」。この不条理は必ず人生に付随するものであり、思考停止し自殺などの過剰な行為によって逃れようとする人も多い。自分は「不条理」と接するとき、どうしていただろうか。不条理と出会ってしまった時でもそれを包み込もうとしている気がする。「ぬくもり」の前では凶悪な「不条理」も無力になる。ただ、それを包み込むのに非常に時間がかかり、精神が摩耗する。終わりなく続く徒労、報われない努力という不条理を前に「すべてよし」と言い切って何度でも受け入れる覚悟。その強さに「幸福」の在り方を見た気がした。ただ、私にはまだまだ難しかった不条理の哲学です(°_°)理解はできるけど「不条理」の全てをのみこめるか、否か。それを出来るのかの確信はない…(*_*) カミュは46歳で夭折したが、老齢の彼の考えも読んでみたかったなあ。
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