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【おすすめBOOKフェア】ほんのまくらフェア85~90

kage

2014/07/29 (Tue)

Arika(フェア)1

紀伊国屋「ほんのまくらフェア」85~90

ほんのまくら2a

本の出だしの文章=「まくら」と呼びます。

有名なものならたくさんある。

「国境のトンネルを抜けると~」…by『雪国』川端康成

「ゆく河の流れは絶えずして~」…by『方丈記 』鴨長明

「メロスは激怒した」by『走れメロス』太宰治

「桜の樹の下には~」by『桜の樹の下には』 梶井 基次郎

「スプリットタンって~」・・・by『蛇とピアス』金原ひとみ


このフェアは、単行本に、冒頭の一文の『まくら』のみ印刷したカバーをつけてビニールで封印。

オリジナルカバーに載っているそれぞれの「まくら」に何を感じ取ったのでしょうか?

それはもう本当に研ぎ澄まされた感覚のみで、きっと不思議な本との出会いが待っていたはずです。

題名も作者も中身もわからない斬新な試みが大反響を呼び、1ヶ月半の期間中、売り上げは目標の約30倍に!


Book紹介案内担当:Arika



★ほんのまくら…85

 まもなく消灯時間だった。
 明朝、眼を覚ますと、もう陸地がみえているだろうという。


雨・赤毛 (新潮文庫―モーム短篇集)雨・赤毛 (新潮文庫―モーム短篇集)
(1959/09/29)
サマセット・モーム

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内容説明
狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。世界短篇小説史上の傑作といわれる「雨」のほか、浪漫的なムードとシニックな結末で読者を魅了する恋愛小説「赤毛」など、南海を舞台にした短篇3編を収録。
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Arikaアイコン(小)1 「南国独特なじっとり粘るような湿気が
体中に纏わりつく、皮肉に満ちた人間ドラマ」

南海を舞台にした短編「雨」、「赤毛」、「ホノルル」の3作品所収。どの話も物語としてよく作りこまれており、読み物としてのクオリティが非常に高い。綿密に紡ぎ上げた中盤の展開が、最後の最後にあっさりとバラバラにされる感覚は癖になる。 特に「雨」「赤毛」ともに最後にハッ!?とさせられ、どちらも人間を深く描き出しており、短編ですが内容は重厚に思います。

短篇「雨」は、任地へ向かう途上で南海の小島にとどめられた、あまりにも職務に熱心な宣教師が、たまたま同じ宿に泊まり合わせた自堕落で肉感的な娼婦を何とか改心させようと躍起になる物語。間断なく重く降り続く長雨を背景に、驚くべき結末を迎える。読んでて一番に感じたのは体に粘りつくような「湿気」でした。モームの描写は、その行間からも結露した水滴がにじみだしてくるような迫力があります。南国の島で、ひたすらスコールに閉じ込められ続けるジトジトの中、留め置かれた人々の鬱積した感情が手に取るように分かります。あの閉塞感と緊張感。ラストの一言への持って行き方がとてもうまいと感じました。いやはや、なんて怖い話なんだろう。凄すぎて上手く言葉が出てこないくらい。

短編「赤毛」」は、南海の島で出会い、一目で恋に落ちてしまった赤毛で美しい白人青年と現地のこれまた美しい娘の物語。28年後に想像を絶する事実が明かされる。南の島の、ロマンな挿話が続いたかと思うと、ラストは衝撃的だった。若い恋人たちもいずれは……な話。 歳月はチョット見ただけでは最愛の人の顔も分からない年月なんだなと、それにしても、この人もまた彼女、子供を置いて出て行ってしまうつもりなんでしょうかね。ときたま意地悪な妄想で「ロミオとジュリエット」が10代で死なずに醜い中年男と2、3人子どもを抱えたおばさんになったら喜劇にもならないだろうなとを考えたりしますが、もしかしたら「赤毛」はそんなことを考えて読むとさらに面白いんじゃないでしょうか。

短編「ホノルル」は前の2作と比べると少し劣る感は否めないながらもしっかり面白いです。少し意地悪な書き方だとは思うけれど、今まで読んだモームの短篇集の中では一番モームらしく皮肉の効いた笑える作品。

この一冊だけで『短篇の名手』モームの美味しいところをざっくり味わえる短編集だった。



Arika報告書y0001おすすめ
★ほんのまくら…86

 みすみすろくな結果にならないとわかっていても
 強行しなければならないなりゆきもあり、
 またなんの足しにもならないことに憂身をやつすのが
 生甲斐である人生にもときには遭遇する。


どくろ杯 (中公文庫)どくろ杯 (中公文庫)
(2004/08/25)
金子 光晴

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内容説明
唇でふれる唇ほどやわらかなものはない―その瞬間、二人の絶望的な放浪が始まった。詩集『こがね虫』で詩壇にはなばなしく登場した詩人は、その輝きを残して日本を脱出、夫人森三千代とともに上海に渡る。欲望と貧困、青春と詩を奔放に描く自伝。

目次
発端
恋愛と輪あそび
最初の上海行
愛の酸蝕
百花送迎
雲煙万里
上海灘
猪鹿蝶
胡桃割り
江南水ぬるむ日
火焔オパールの巻
旅のはじまり
貝やぐらの街

著者紹介
金子光晴[カネコミツハル]
明治28(1895)年、愛知県に生まれる。早大、東京美術学校、慶大をいずれも中退。大正8年、『赤土の家』を出版後渡欧、ボードレール、ヴェルハーレンに親しむ。大正12年、『こがね虫』で詩壇に認められたが、昭和3年、作家である夫人・森三千代とともにふたたび日本を脱出、中国、ヨーロッパ、東南アジアを放浪。昭和10年、詩「鮫」を発表以来、多くの抵抗詩を書く。昭和50(1975)年没

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Arikaアイコン(小)1 「読めば読むほど、
金子光晴の毒にハマってしまう中毒性自伝 」

金子光晴の自伝的小説。妻となる美千代との馴れ初め、そして実に文学者らしいといえば文学者らしいダメな生活。一人で上海に行き、戻ってきたら夫人がアナーキストの青年と同棲している、という状態。どっちもどっちなのだけれども、嫉妬に苦しみつつ、その解決方法として海外に出てしまおうという破天荒な選択肢をとったり、上海での沈殿生活を送ったり、と実に無頼な生活がすさまじい。時期として、アナーキストやボルシェヴィキ、大正なのだなあという言葉が並び、女性の恋愛観も少し解放的であったり、上海での様子も共同租界っぽい混沌具合。と 無茶苦茶な生き方をした人なんだなあ…。ちょっと読みづらかったけど、時々出てくる表現にハッとさせられたりする。 いつも思うことなのだけれど、この時代のひとたちは「恋愛をしてみよう」と決めてから恋愛をしているような気がする。感情としては同質のものだとしても、入り方が決定的に違うから妙に冷静だというか、自分の感情や行為に対して客観的であるように感じられるのだろう。しかし、光晴の視点は低く、人間の汚らしいところ、ずるいところを、悲壮感なくユーモラスに語るくせに、詩的なアフォリズムや人生訓でも魅了されてしまう独特な文章の味があり、読めば読むほど、金子光晴の毒にハマってしまう中毒性がある。

本書はこの夫婦が2年に及ぶ上海生活を終えてパリに向けて旅立つところで終わり、その後の更に5年に及ぶ放浪生活は続編の「ねむれ巴里」「西ひがし」に描かれている。本書を読了した現在の心境は、「毒を食らわば皿まで」ではないが続編も読まずにおれないという気持ちだ。



★ほんのまくら…87

 水のように澄んだ空が星を漬し、星を現像していた。


夜間飛行 (新潮文庫)夜間飛行 (新潮文庫)
(1956/02/22)
サン=テグジュペリ

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内容説明
第二次大戦末期、ナチス戦闘機に撃墜され、地中海上空に散った天才サン=テグジュペリ。彼の代表作である『夜間飛行』は、郵便飛行業がまだ危険視されていた草創期に、事業の死活を賭けた夜間飛行に従事する人々の、人間の尊厳を確証する高邁な勇気にみちた行動を描く。実録的価値と文学性を合わせもつ名作としてジッドの推賞する作品である。他に処女作『南方郵便機』を併録。

著者紹介
サン=テグジュペリ[サンテグジュペリ][Saint‐Exup´ery,Antoine de]
1900‐1944。名門貴族の子弟としてフランス・リヨンに生れる。海軍兵学校の受験に失敗後、兵役で航空隊に入る。除隊後、航空会社の路線パイロットとなり、多くの冒険を経験。その後様々な形で飛びながら、1928年に処女作『南方郵便機』、以後『夜間飛行』(フェミナ賞)、『人間の土地』(アカデミー・フランセーズ賞)、『戦う操縦士』『星の王子さま』等を発表、行動主義文学の作家として活躍した。第2次大戦時、偵察機の搭乗員として困難な出撃を重ね、’44年コルシカ島の基地を発進したまま帰還せず

堀口大學[ホリグチダイガク]
1892‐1981。東京・本郷生れ。詩人、仏文学者。慶応義塾大学を中退し、10数年間外国で暮す。『月光とピエロ』に始まる創作詩作や、訳詩集『月下の一群』等の名翻訳により、昭和の詩壇、文壇に多大な影響を与えた。’79年文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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Arikaアイコン(小)1 「物語というより、
サンテグジュペリのうつし世を鏡で写したような読了感」

あの『星の王子さま』を書いたサン・テグジュペリの実体験に基づいたドキュメンタリー作品なのだが最初はにわかには信じがたいが、本書は1920年代にヨーロッパからアフリカ、果ては南米までの路線を誇った航空郵便の物語。地上と星空とを結ぶ人間の絆、そして孤独な思い。郵便飛行機事業に命を賭ける男たち、夜の冒険者たちの一夜。冒険者と一つの土地や家族など、変わらない生活を愛する者とを隔てる距離の切なさと飛行士が空から見ている様々な景色の両方が、抽象的な概念と映像的な鮮明さのどちらも中途半端にならず共在している素敵な小説である。リヴィエールの部下への思いが徹底していて、そこにグッと感心させられる。時代が異なるから何とも言いがたいけど、命をかける重みが違いすぎる。現在、夜に飛行機に乗ることは特別ではないが、こんな時代を経て、今のように夜間飛行が可能となったのだろう。 作者の実体験に基づいたドキュメンタリーでありながら、かくも幻想的な世界へと読者を誘う出色の物語。何時間という飛行の間中、テグジュペリは空ばかり見ていたんだろうな…。雲に見え隠れする星を思い、そこにひとり暮らす王子を想像していたのかもしれない。孤独から生まれる文学は美しい。



★ほんのまくら…88

 無数の大黒天吉祥天女が舞い踊っている。
 通りの両側に建つビルの窓から水が噴出し、
 沿道の群衆の発する歓声がひと固まりになって空中に高巻いて唸っている。


きれぎれ (文春文庫)きれぎれ (文春文庫)
(2004/04/07)
町田 康

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内容説明
絵描きの「俺」の趣味はランパブ通い。高校を中途で廃し、浪費家で夢見がちな性格のうえ、労働が大嫌い。金に困り、自分より劣る絵なのに認められ成功し、自分が好きな女と結婚している吉原に借りにいってしまうが…。現実と想像が交錯し、時空間を超える世界を描いた芥川賞受賞の表題作と他一篇を収録。

著者紹介
町田康[マチダコウ]
1962年大阪府生まれ。高校時代より町田町蔵の名で音楽活動を始め、81年、パンクバンド「INU」の『メシ喰うな』でレコードデビュー。俳優としても活躍。96年「文学界」に発表した処女小説『くっすん大黒』で97年に第19回野間文芸新人賞、第7回ドゥマゴ文学賞を受賞。2000年『きれぎれ』で第123回芥川賞を受賞、2001年には詩集『土間の四十八滝』で第9回萩原朔太郎賞を受賞、2002年『権現の踊り子』にて第28回川端康成文学賞を受賞

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Arikaアイコン(小)1 「読む方もきれぎれ?
臭気を放ち疾走するダメ人間の妄想」

なんだろ、この感想の書きづらさは…。なんていうか、主人公のダメンズを中心に、世界そのものをまわりから押し曲げて、丸め込んで、雑多な音と臭いと色彩と手触りが混じったものが、丸め込んだものの割れ目からぬるぬる出てきてるような文章です。小説か?っていうと、これはもうなんとも言い難く、主人公は押し込まれた球体のどろどろの中心で何も考えず、怠惰でロックな生活を送り続けているのだろう難解さ。1人称小説だが、主人公が見たもの、思ったもの、夢想したことも、最小限の改行ですべてそのまま書き綴っている。現実と想像がきれぎれに錯綜していく様子に翻弄され、ついていくのがアホらしくなったと同時に町田康ワールドに見事に引きずり込まれてしまう。ブッ飛んだ妄想の暴走と豊富な語彙、独特な言葉のリズム。最後の最後の一字がとても白眉。この作品を無限にループさせていくような効果をもたらしている。話の筋が全然読めないまま何が何だかわからないまま、読み終わった。主人公のダメ男は、結局最後までダメ男のまんま、もうグダグダ・・・。ラストの『振り返ると、青空。きれぎれになっていて腐敗していて。』の場面で、「腐ってんのは、空じゃなくてあんただよ!」と思いましたが、この青空で最後に「読み手」が唯一スッキリ救われた気がします。

池澤夏樹氏によると『完全に計算された作品』と解説しているが、解説読んだらもっと分からんくなった(笑)。・・・で、結局「きれぎれ」って何なんだろうか・・・。ブラックホールのようなものなのだろうか…? 正直、何度読んでも展開が掴めず、時間感覚や空間感覚がわからなくなる。珍妙なシーンには笑わずにはいられないし、まさにカオス!!




★ほんのまくら…89

 もはや、朝になっても、起上る必要はまったくなかった。


ちょっとピンぼけ (文春文庫)ちょっとピンぼけ (文春文庫)
(1979/05)
ロバート・キャパ

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内容説明
スペイン内乱からインドシナ戦線まで五つの戦場の写真を撮ったキャパ。誰より勇敢で誰より戦争を憎んだキャパ。これは彼の心の叫びを綴った恋と従軍の手記である。
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Arikaアイコン(小)1 「死と隣り合わせの職業、写真ジャーナリストの青春記」
106枚写した私の写真の中で救われたのは、たった8枚きりだった。熱気でぼけた写真には、”キャパの手は震えていた”と説明してあった。おそらく歴史上もっとも有名な戦場写真家、ロバート・キャパが残した第二次世界大戦中の活動回想録。かなり個人的な記録で、恋人との間のことや、連合軍の兵士とのポーカー、酒の話が頻繁に出てくるが、キャパ自身の戦争あるいは平和に対する思想や、抗議、希望、感傷は一切書かれていない。ひたすら、どこに行って、誰の手助けを受け、どんな写真を撮り、束の間の休息には友人と酒を飲み…とうとう最後までキャパが何を考え戦場で写真を撮り続けたか書かれていなかった。当然だ、文章を書くことが彼の表現方法ではないもの。偉大なる戦場カメラマン、ロバート・キャパの想いは、彼の撮った写真を目にすることでしか知ることはできないが、緊迫した戦場の中で生きてるからこそ食事にベッド、話し相手というちょっとしたところに幸福を感じていた彼の青春記が伝わってくる 。文庫には無いが、彼の写真で少女が窓からネコに向かって手を出してるのが好き。



★ほんのまくら…90

 モリー・レインのかつての恋人ふたりは
 二月の冷気に背を向けて火葬場付教会の外に立っていた。


アムステルダム (新潮文庫)アムステルダム (新潮文庫)
(2005/07/28)
イアン・マキューアン

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内容説明
ロンドン社交界の花形モリーが亡くなった。痴呆状態で迎えた哀れな最期だった。夫のいる身で奔放な性生活をおくった彼女の葬儀には、元恋人たちも参列。なかには英国を代表する作曲家、大新聞社の編集長、外務大臣の顔も。やがてこの三人は、モリーが遺したスキャンダラスな写真のために過酷な運命に巻き込まれてゆく。辛辣な知性で現代のモラルを痛打して喝采を浴びたブッカー賞受賞作!
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Arikaアイコン(小)1 「モラルのない社交界の話。
モリー・レインを一番愛していたのは誰?」

それなりに成功を収め、それなりの良識派でもある団塊世代の男達が一枚の写真をきっかけに狂気に駆られていく。マキューアン氏の作品のなかでは比較的、変態度低めといわれる本作ですが、中年男の友情とその崩壊に於けるリアリスティックで執拗な描写には充分「変態的」な香りがプンプンします。二人が「交わした契約」とそこから生じる「厳粛な義務」がタイトルの意味を導き出すとき…なんとも皮肉な運命の悲喜劇に舌を巻く。残酷な結末だというのに、最後までふざけているような軽やかさも本作の不思議な魅力です。 真剣に何事かに打ち込んでいる主人公二人の頑張りが見事にぶち壊し「…っていう話だったのさ」で終わるジョークのような本でした。自分の情熱と倫理観に沿って懸命に生きるのに、なんだかおかしくなっちゃうね、っていう大人のための童話のような皮肉なラストが好きだ。人間の歪みや壊れたり変化していく人間関係を描かせたら、この作者の右に出る者はいないかもしれない。
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