デジモンアドベンチャー15周年記念【番外編企画】・劇場版『デジモンアドベンチャー』を語りましょう!

2014/08/07 (Thu)


前
回にも語ったように細田初の劇場作品となったのが、99年公開の映画『デジモンアドベンチャー』です。
ストーリー1995年の春休みに起きた事件。選ばれし子供達が初めてデジモンと接触した日、そして「なぜ彼らが選ばれたか」かの原因になったある事件を描いています。テレビ版のプロローグ的な話で、なおこの事件後のテレビ版では一般に「光が丘爆弾テロ事件」として報じられています。この事件がきっかけで太一たちは選ばれし子供になりました。テレビ版のストーリーと密接につながっていて、この時の話がテレビ版本編に出てきているのでTV版のチェックしてみてください。
この作品はかなり個人的な思い入れが強いので、前回ほど冷静に語れないかもしれませんが、ご容赦くださいませ!
まず、大きな本作のトピックスはなんといっても細田守劇場デビュー作であることです。
今や不動の映画監督・細田守はここから始まった記念すべき作品だという事です。
本作は、いずれも「避けられない別れ」というテーマを軸に描かれました。
このテーマでの細田作品はもうホントに目頭が熱くなるほど我々を泣かせます!
・・・・・では、劇場版第1作の魅力と面白さについて語っていきたいと思います。
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劇
場版『デジモンアドベンチャー』は、TV版『デジモンアドベンチャー』のプロローグ的な位置づけにあります。
TVアニメ本編より時間軸的には少し前の話で、1995年の東京光が丘団地で突如現れた”謎の怪獣”とそれを目撃した兄太一と妹ヒカリの1日の物語。
幼い主人公である太一と妹ヒカリが、初めてデジタルモンスターに遭遇します。
この話が後にテレビ版に繋がるわけです。
本作は、TVシリーズの準備とほぼ同時に劇場版が作られるという異例の展開です。細田がここまで演出を手がけてきた作品本数はそう多くはありません。シリーズディレクターの経験もありませんでした。そこに、突然の新作、突然の劇場作品。そこには関プロデューサーによる英断があったのです。
TVアニメ第3期『ひみつのアッコちゃん』(1998年)で、細田の力で認めた関プロデューサー(※下記の「関弘美」を参照)は劇場監督に細田を抜擢。しかも、20分の短い尺という「宿題」つきで…。これはTVシリーズの1回分よりも短く、劇場1本目にして、かなり制限された条件だったと言えるのではないでしょうか。
若き日の細田守は熱き意気込みで絶対に映画として成立させてみせるゼ!!、と闘志濃縮100%でこの宿題に挑みます。
果たして、ドラマを生み、劇場作品として成立させることができるのか?……といえば、これが見事に成立させちゃったんですね。
細田は自分を映画監督に抜擢してくれた関プロデューサーの難しい要求に見事に応えました。
その流れで、TVシリーズ21話「コロモン東京大激突!」も担当し、劇場2作目『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』にて、トータルクオリティの高さが話題を呼び、不動の評価を築きました。
本
作の公開日の翌日がTV版『デジモンアドベンチャー』第1話の放送日だったという事情もあり、わずか20分の作品の至る所にTVシリーズへつながる伏線を張り巡らせます。
太一とヒカリ以外の選ばれし子供たち6人も登場、喜怒哀楽のドラマテック性、一切無駄のない構築された世界観、センスが光る映像美、そして・・・・全てを包み込むボレロの旋律の高鳴りとともに最後は興奮と感動のおまけつきで、観たものをボロボロに泣かせやがるのです。
同日封切の映画「ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒」のプロデューサーは本作を絶賛しており、見た直後、特撮監督を務めた樋口真嗣に「このような作品を作らないとだめだ」と言ったという逸話が物語る通り。
映
像と音楽は密接な関係は、本作においてはラヴェルの「ボレロ」がそれにあたります。
本作で使われている「ボレロ」はかなりの印象に残ります。
何より、本編で使われているBGMはこれ1曲というのがすごいです。
ボレロというと、繰り返すフレーズと、少しずつ盛り上がっていく旋律が特徴です。
これが本作とぴったりマッチ! 変化しながら繰り返すフレーズは、デジモンの進化と変化に合わせて用いられ、まるでデジモンという存在そのものを音楽で表現しているようであり、それは細田演出における特徴のひとつ「繰り返し」が音楽においても効果的だという証明でもあります。
そして、ドラマが展開するとともに盛り上がっていく旋律の高鳴り…♪
デジモンとの好奇心たっぷりの出会いは、ボレロ冒頭の静かなピアニッシモで幕を開け、圧倒的な怪獣同士のクライマックスシーンで、あの迫力ある旋律がフォルテシモでガンガン脳内に流れて、我々に高鳴る興奮をより高みへ高みへと誘います・・・♪
実に効果的に興奮を引き立て、見終わるとボレロの旋律が脳内から抜けなくなる、ボレロを聴くとまるで細田守のテーマ曲のようにリプレイされ映像も同時に脳内配信されるこの効果は、まさにトラウマ級といっていいほど相乗効果が抜群です。
物
語の軸はデジモンと、太一との出会いの物語ともいえます。
冒頭のモノローグ「あれは早すぎる出会いだった」と、ラストの台詞からもそれが窺い知れますが、この「出会いの衝撃と、そこで起こった太一の変化」がたった20分の本作を映画たらしめていると断言してもいい!
冒頭、出会ったデジモンとの接触に、少し年長の太一は不安げながらも惹かれますが、ヒカリはもっと単純に興味津々の無邪気さです。怪獣に出会った兄妹が互いに違う印象を持ち続けるというコンセプトは、映画『ミツバチのささやき』からのモチーフだと言われています。ところが、愛らしかったデジモンが進化していくにつれ、それは訳の分からないものへと変わっていきます。興味は・・・・・やがて恐怖へ。そして、再度進化したデジモンとの最後の瞬間に、不安を抱いていたはずの太一は大きな転換を迎え、何かを感じとる……のです。しかし、すでにデジモンはもうそこにいないのです。
全
編にわたって引きぎみのカメラアングルと、太一とヒカリとグレイモンのラストの描写、台詞の極端な少なさから、本作は独特の情感漂う作品となっています。
本来なら哀しむべきシーンのはずなのになぜか希望が混じった涙が溢れてきます。
そこに、「デジモンは消えてしまったけれど、太一はきっとデジタルワールドへ行くのだ」を感じさせられる見事なラスト…。
そして、セリフとしてないものの、「また、会えたね」みたいなTV版のある回の物語に繋がるであろう隠れた伏線も込められてた気がします。
何故、私がそう思ったのかについては、いずれまた・・・。
何度観ても私をボロボロに泣かせるのは、この言いようのない悲しい別れと、希望ある出会いに対して…。
冒頭のモノローグ、「あれは早すぎる出会いだった」という前提があって描かれる、「太一とヒカリとの避けられない別れ……。」
細田守が1作目で仕掛けた、暗号めいた伏線に気付いた時、その幻想的な世界観とBGMが相まって、必見の名シーンに心奪われちゃうのでしょう。

なお、観る際はハンカチ・・・2枚のご用意を忘れなきように…
・・・・・・・・・って、まだまだ言い足りないけど、今回はここまでで!
次回は、TV版21話「コロモン東京大激突!」です。
細田守が唯一、『デジモンアドベンチャー』TVシリーズで参加した重要な回です。
お盆で週末から大阪に帰るので、次回更新は8月15日頃です。
ではでは… (。・ω・。)ノシ see you NEXT Time☆★

TVアニメ第3期『ひみつのアッコちゃん』(1998年)
、『ひみつのアッコちゃん』は69年、88年、98年と、リメイクされている人気シリーズ。赤塚不二夫のマンガが原作で、「テクマクマヤコンテクマクマヤコン」の呪文を唱えると、主人公の少女「アッコちゃん」が変身。困っている人を助けていきます。この3期で、細田が演出を担当したのは第6話「学校を守れ! アッコ校長」、第14話「チカ子の噂でワニワニ!?」、第20話「華麗なるマジシャン!」、第30話「ロミオがいっぱい!?」の4本。特に2本目の作品「チカ子の噂でワニワニ!?」は現在でも細田ファンの間で語り草になっていますが、詳しい説明は、いずれ・・・。
「吉田玲子」について
広島県出身の女性脚本家。日本脚本家連盟会員。1992年セシールシナリオ大賞(オリジナルビデオ)で、『B級パラダイスへ行こう』が佳作、NHK中国四国ラジオドラマコンクールでも次々と佳作を取り、創作ラジオドラマ脚本懸賞募集で『悪役志願』で入選。ラジオドラマ各受賞作は次々とオンエアーされる。現在ではアニメを中心に脚本家活動を展開。
「関弘美」について…
『ママレード・ボーイ』や『デジモン』シリーズ、『おジャ魔女どれみ』シリーズなどで有名な東映アニメーションのプロデューサー。作品のコンセプト面に大きく関わり、演出家に対して的確なアドバイスをする事で知られています。演出家になりたてだった細田にも、多くの助言があったのではないでしょうか。また、のちに劇場版『デジモンアドベンチャー』を共に手がける事になる、脚本の吉田玲子とも出会っており、その後の細田守を考える際にも、『ひみつのアッコちゃん』は避けて通れない作品である。
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