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(第152回芥川賞受賞作品特集!①)九年前の祈り/小野正嗣(著)

kage

2015/02/05 (Thu)

あくたがわ2015い1

芥川龍之介の名を記念して、直木賞と同時に昭和10年に制定された。

芥川賞…”純文学”を対象とした作品。

各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品中最も優秀なるものに呈する賞。


Arikaメダル1第152回芥川賞受賞

 九年前の祈り/小野正嗣(著)

九年前の祈り九年前の祈り
(2014/12/16)
小野 正嗣

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●内容紹介
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「握っていなければならぬ貴重な手がふと離れてしまうとき、あたりにたちこめるとりとめのない時間は、甘美な苛酷さへとまがまがしく変容する。その一瞬に立ちあった者の心の乱れは、容易にはおさまるまい。『九年前の祈り』は傑作である。」─蓮實重彦氏

「彼女が水辺で、異次元に生きているかのようにも思われる息子と、突然に手をつなぐ。その電撃的な清冽さによって、この小説は尊い。」──朝日新聞・片山杜秀氏

「『現代』と『神話』の同居しているところに作品の愉悦がある」──毎日新聞・田中和生氏

「最も力のある作品」「悲しみに折れない人間の手応えが伝わってくる」──東京新聞・沼野充義氏

「すべてのものを飲み込んでしまうおおらかなたゆたいの中で、小さな粒を、一つのメルヘンとも呼べる澄んだ真珠に育て上げた。」──読売新聞・待田晋哉氏


など、各紙文芸時評で絶賛された傑作!

三十五歳になるシングルマザーのさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった。






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物語を楽しむ作品ではなく、文章を楽しむ作品。

全部読み終えて最後にストーリーが一つに繋がっていく旋律みたいな楽しさ♪


Arikaアイコン(小)1川賞受賞作の『九年前の祈り』を含む4篇が収録されてますが、どれも関連のあるものとなっていて、短編として読むよりも一冊の長編として読むのがいいと思う。『九年前の祈り』は漁村で育った主人公さなえと息子・希敏(ケビンと読む)の物語。夫であるフレデリックは母子の前から姿を消す。物語は、障害児の息子を持つシングルマザーさなえは、大分の海辺の小さな集落にある実家に出戻ってくる。出戻りの主人公が、田舎で暮らしながら、九年前のフレデリックとの出会いのきっかけであるモントリオール旅行の回想に浸る「過去」を挟みながら淡々と進む。手がかかる息子、無感情で不器用な父、悪意に自覚も躊躇もない母。自分の息子とみっちゃん姉の息子。二人の母親の心の痛みと深い慈愛が時を経て重なり合う心・・。 決して難しい文章ではないけれど、物語を楽しむ作品ではなく、文章を楽しむ作品である。

とにかく、この著者は文章の旋律がうまいなあと感心しきりでした。現在と記憶が交錯するのですが、すべての時空間が螺旋状に一体化して、終盤の祈りの美しい場面へと収斂されていきます。『悲しみが身じろぎするのを感じた。それは身をかがめると、さなえの手の上にその手を重ね、慰撫する様にさすった。(p114)』。悲しみに包まれながら息子を抱く最後の場面が特に印象的に残る。四編のどの話も緻密に練られていて、純文学の練りの面白さがある。あえて不満を言うと主人公・さなえの心のどこかに、 この子から解放されたいという思いがあったんだろうという心情は理解できるが、ただ母性として自分の子供の泣き声が引きちぎられたミミズのようにという表現が何度も出てくるのはどこか受け入れ難い残尿感みたいな不快さが残る...。 でも最後まで読み終えて冒頭の渡辺ミツさんと息子さんのことが分かり、カナダの教会で長い祈りをささげていたみっちゃん姉の祈りの意味が理解できた。障碍のある子供を持ってみないとわからないことがある人それぞれの人生、それでも生きていく強さ。 四篇で一冊となっているので全部読み終えてストーリーが一つに繋がっていく旋律みたいな作品。芥川賞受賞作にしてはわかりやすいけれど、決してスラスラと読み易くには難しい。


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