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(第152回直木賞受賞作品特集!①)サラバ!(上・下)/西 加奈子(著)

kage

2015/02/10 (Tue)

あくたがわ2015い2

直木三十五の名を記念して、芥川賞と同時に昭和10年に制定された。

直木賞…”大衆文芸”を対象とした作品。
各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)あるいは単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。

大衆文芸とは?…「娯楽性」「商業性」を重視!
大衆小説(たいしゅうしょうせつ)、大衆文学(-ぶんがく)とは、純文学に対して、芸術性よりも娯楽性・商業性を重んじる小説の総称である。「娯楽小説」「娯楽文学」も同義語。「通俗小説」「通俗文学」とも呼ばれた。


Arikaメダル1第152回直木賞受賞

 サラバ!(上・下)/西 加奈子(著)

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●内容紹介
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西加奈子作家生活10周年記念作品

1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。
父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。
イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。
後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに――。

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加奈子作家生活10周年記念作品。

圷家、父、母、姉の貴子の生活を主人公・歩の目線で語る・・・


Arikaアイコン(小)1者の作家生活10周年の集大成といってもいい大作であり、著者の溢れ出るような才能を評価したら、堂々の受賞だと思う。

本作の主人公である圷(あくつ)家の長男・歩は1977年にイランのテヘランで産まれた。このプロフィールは西自身のものと重なっています。圷家は両親と歩、そして姉の貴子の4人家族。美しくチャーミングで気の強い母、自分を見てほしいという強烈な願望を持つ問題児の姉、穏やかで物静かな父と共に大阪、エジプトのカイロと移り住みながら成長していく。しかし幸福な時代は長くは続かず父親の都合で一家がエジプトに住んでいたとき、父親と母親の間に亀裂が入るからです。母親に引き取られて日本に帰国した貴子と歩は、その旧姓である今橋を名乗るようになる。姉弟のうち歩は容姿に恵まれていたことも手伝って早期に日本社会に馴染んでいくのだが、貴子はそうはいかなかった。弟の目から見た今橋貴子は新興宗教にはまったり、自己承認欲求を満たすために奇矯なアート活動をしたりという「痛い」女性に映る。その姉や、他の家族は差し置いて自分が再婚することしか頭にないように見える母と距離をとりつつ、歩はバブル終焉後の日本でそれなりの成功を収めていく。しかしあるとき、これまで乱万丈の割にはそつなく熟してきた彼に思いがけない問いを突きつけられることになる―――。

まず冒頭。舞台背景が、非常に興味深い。そして、登場人物。それぞれ読みやすい描写で、その特徴が容易に想像できる。姉が祈り好きであるとか、母親は気に入った服をみつけるのがうまいだとか、父親はタバコを吸う時は近寄りがたいとか。まるで、それぞれモデルがいるかのようにリアル。幼い頃からどこか一歩引いて静観するような所がある主人公。母も母で姉も姉だけにこの家族がよくエジプトで団結していたなぁと感心すらした。イラン革命、父のエジプト赴任、日本人学校時代、両親の離婚後、帰国するなど、走馬灯の様に過ぎていく出来事に引き込まれ、後半は一気読み。歩たちが成長していくたびにこの家族どうなっていくの?と不安が拭えない。やがて何に対しても主体的になれず、少年時代に手にしていたはずの輝きを失ってしまった歩が、自分の存在を受け入れ、信じるものを手にするまでの32年間の歳月を個性豊かな人々との出会いと別れ、現実の社会背景と絡めて描く。物語の持つ力を読む者に強く感じさせる壮大な長編小説です。

昭和末期から平成にかけての世相が書き込まれた風俗小説であるのは当然として、重要なのは主人公である歩が家族や世間を見る視線にはこの時代ならではの意識が籠められているという点にある。時代のただなかにいて、その空気を吸っている人間には自明すぎてわからなくなってしまうことがある。それを明らかにするために、一つの時代の鏡として著者はこの作品を書いたのだろうと思います。主人公が著者のプロフィールの一部を分け与えられ、いわば裏返しの自分というようなポジションを与えられているのはそのためだろうと思われる。著者はもっとも信頼できる自分自身の視点を使うことによって、それを裏返すための視点を確保したのであろう。ある種、著者の自伝的な作品でもある。

痛い姉、両親の離婚と波乱万丈の割には変に目立つことはせず、どんな環境にも適応し、そつなく青春を謳歌する主人公・歩は頼もしく感じた。カイロ時代のヤコブとの友情が微笑ましく感じた。父が離婚後も歩を気にかけている所に親子の絆を感じて良かった。そして、あいかわらず著者は個性的な女性を描くのが上手く、ぐいぐい引きこまれました。主人公は歩のはずなのに、マイノリティにこだわる姉の貴子のキャラが強烈すぎて、私としては彼女の方がむしろ気になってしまった。

題名の意味は上巻で明らかになる。

エジプトで圷家がもっとも幸せだった時代にあった出会いの中でその言葉は交わされたのだ物語の終わりで歩は再びその言葉を口にすることになる。

長い時間を経て言葉の背負う意味はどう変化したか・・・そこが一つの読みどころになるだろう。

今作品は最初からドンドン引き込まれた。特に冒頭の一行目は印象的だった。暗い世の中だからこそ、こういう前向きで明るい、スケールの大きな作品が受賞できたことは、いち読者としては喜ばしい。欠点はあっても、それをしのぐ”信じるものに向かって進んでいこう”という強いメッセージを感じました。上下巻の長い物語だが、それだけ分量を必要とする作品でもある。でも読み終わった後にあなたの心にも青空が広がる、それがこの作品の最大の魅力です。

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