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(第153回芥川賞受賞作品特集!⑥)ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス/滝口悠生(著)

kage

2015/07/25 (Sat)

芥川賞153


芥川龍之介の名を記念して、直木賞と同時に昭和10年に制定された。

芥川賞…”純文学”を対象とした作品。

各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品中最も優秀なるものに呈する賞。


■芥川賞選考委員
小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、高樹のぶ子、堀江敏幸、宮本輝、村上龍、山田詠美(敬称略)



第153回芥川賞候補作
 ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス(新潮5月号)/滝口悠生(著)

新潮 2015年 05 月号 [雑誌]/著者不明

¥930
Amazon.co.jp



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●内容紹介
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九月末だがこのあたりではまだ稲穂は刈りとられていない。国道の片側には田んぼが広がり、強い日を受けて全面がぼんやり輝いていた。道を挟んでその田んぼを見下ろす形の小さな山がある。山の縁に沿って道はカーブし、その陰に隠れた。さっきから車は一台も通らなかった。山の木陰を流れる小川も国道に沿って流れているが、元はこの川に沿って道がつくられたのだ。冷たい川の水に足を突っ込んで呆然としていた私の目がその時何を見ていたかなど、もう覚えていない。
(冒頭より)

2001年の9月末、当時大学1年生だった「私」が、ひとりバイクで東北を旅した時に体験した幾つかの出来事を、いまや妻子もある2015年の時点から回想しながら、そのあいだに位置する複数のエピソードを交え、あの頃から現在までに横たわる短くはない歳月が、どのように過ぎ去ったのかに思いを馳(は)せる。



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今、本で読むよりも

ロードムービーになってから見たい(読みたい)そんな作品!

・・・そして、その映画はヒットする予感がする、

是非映画化希望…d(`・ω・´)キリ



Arikaアイコン(小)1潮5月号の目次にはこう書かれている。

『ジミヘンのギターのように幾重にもフィードバックされる、苦い恋と東北バイク一人旅の時間。記憶の不可思議さに迫る飛翔作!』

1967年夏、米国カリフォルニア州モンタレーで開催された「ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」を題にしてしての私小説。19歳のバイク((ホンダ ベンリー50S・赤)東北旅前後の青春の日々を思い返す話。ある埼玉出身の平凡な男の子の高校卒業から30代前半までの半生を本人視点の再編集による記憶と「過去からの跳ね返り」で描く。19歳の時に原付で東北地方を一周したこと、高校の美術講師・房子(先生)と卒業後関係を持ったことを重点的に語りながら、過去は自分がつくり記憶したものだけで成立していることを語る。大学の先輩への片思い。自主映画を撮る親友。いわきで出会った東京電力に勤める男たち。仙台のアーケード街でジャンベを叩(たた)くストリート・ミュージシャン。酔っぱらいのおじさん。途切れ途切れに語られる挿話はいずれも魅力的だ。この小説が描く時間には「2001年9月11日」と「2011年3月11日」が含まれている。どのように描かれているのかは、ぜひ読んで確かめてみてほしいが、震災を挟んで描くのなら、震災前と震災後の「過去からの跳ね返り」も描いてほしかった。

「過去から跳ね返ってくるのは、私がつくった過去ばかりで、

そこにあったはずの私の知らないものたちは、過去に埋もれたままこちらに姿を見せない。

思い出されるのは知っていることばかりで、思い出せば思い出すほど、記憶は硬く小さくなっていく」
(P46)。

記憶の頼りなさ、とりとめのなさ、独善性、つまるところ「どうしようもなさ」が、読み心地のいいペースで描かれている作品。

こういう青春小説、好きですよ。過去を賛美することなく、「何となく惜しい時代なのだが、今の自分には引っ掛かりがない」という冷めた感じに、ものすごく共感できます。作品自体はなにか著者自身を被らせているような印象を受ける。過去の自分を憶いだしながら、最後に自分の死後を見つめる主人公。題名は不世出のギター・ヒーロー、略称ジミヘンが率いていたバンド名だが、ジミヘンが得意としたフィードバック奏法のように、幾つもの思い出が増幅されながら回帰してきては、また遠くへと戻ってゆく。ちなみに美術準備室に船木先生(美術)のCD(60~70年代のジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン、ドアーズなど・・)の1枚としても出てくる。主人公はバンドサークルでジミヘンの「ファイア」を演じる。「私」がジミヘンに影響されてライブでギターを燃やし、エスカレートして焚(た)き火しながら演奏するようになる展開には爆笑した。

Let me stand next to your fire ♪


エクスペリエンス・ヘンドリックス~ベスト/SMJ

¥2,520
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ジミ・ヘンドリクスを知ってる人は少ないように思うが、彼はステージ上でギターを燃やすことさえ「音楽」たりえることを示したミュージシャンです。彼のギタープレイから出る独特のノイズ、特に抜けている訳でもない房子や桃江の魅力と引き合わせているのは巧いです。自棄になってのスクーターの旅も、若さならではの1ページであろう。ただ、この時代のカリスマ的な存在を出すには余程注意しないと、それ(存在感)にやられてしまうのではないかと思う。それと、時間軸を前後に行ったり来たりしながら、主人公が過去そして現在を語るスタイルの小説なので、気をつけて読んでいかないと、場面に置いて行かちゃう。かくゆう私も本作では第10節の時制が分かりませんでした。こういう時間軸を翻弄するようなタイプの小説は好きなのだけど、割りと常識的な範囲で収まっている感じで、読んでて、ちょっと気持ちが乗り切れないモヤモヤした感じが残った。

滝口氏は気鋭の作家として幅広い作品を多く描いており、独特の世界観や主題も持っており、今後の文壇を背負って立つであろう逸材である。旅と恋と音楽の記憶が、9・11と3・11の記憶が、そして一瞬一瞬ごとに過去を生成する「現在」が、ギターの弦のように共鳴し、フィードバックする。「楽器」という題の作品で新潮新人賞よりデビューした作家の、これは飛躍作。本作を例えるなら、30代の男性が青春時代の東北バイク旅行を回想する「記憶」という過去と現在をつなぐ小さなタイムマシンだろう。自身の体験・記憶を現在の視点から過去を追憶するこちらも最近多用されている「時間軸もの」ですが、意図的に主人公の記憶を混濁させている節があり、文体の乱れ、物語、時間軸の乱れによって読者と主人公を一体化させようとする技術は高い評価に値します。評価した上で、個人的印象として、言いたいことはなんとなくわかるけど、でもわかるようで、わからないモヤモヤするもどかしさが彼の作品にはあります。久々に古き良き青春小説を読んだ気がしたし、ギターを何本も燃やすエピソードとか所々なんか面白かったし、句点の打ち方が独特で、それもまた面白かった。今後何らかの賞候補になりそうな予感はさておき、前々から著者のこーゆー青春もんが読んでみたかったので叶いました。  

最後にここまで紹介しておいて今更なのだが・・・

今、本で読むよりもロードムービーとして映画化になってから見たい(読みたい)そんな作品!

・・・そして、その映画はヒットする予感がするので、是非映画化希望…d(`・ω・´)キリ





滝口悠生(たきぐち ゆうしょう)

1982年東京都生まれ。埼玉県育ち。

2011年「楽器」で第43回新潮新人賞受賞。

〈作品〉
『寝相』2014年新潮社刊=第36回野間文芸新人賞候補。
『愛と人生』15年講談社刊=第28回三島由紀夫賞候補。



明日からは、直樹賞6作品へ。
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