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(第153回直木賞受賞作品特集!①) 流[りゅう]/東山彰良(著)

kage

2015/07/26 (Sun)

直木賞153


直木三十五の名を記念して、芥川賞と同時に昭和10年に制定された。

直木賞…”大衆文芸”を対象とした作品。

各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)あるいは単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。

大衆文芸とは?…「娯楽性」「商業性」を重視!
大衆小説(たいしゅうしょうせつ)、大衆文学(-ぶんがく)とは、純文学に対して、芸術性よりも娯楽性・商業性を重んじる小説の総称である。「娯楽小説」「娯楽文学」も同義語。「通俗小説」「通俗文学」とも呼ばれた。


■直木賞選考委員
浅田次郎、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆき


Arikaメダル1第153回直木賞受賞

 流[りゅう](講談社)/東山彰良(著)

流
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講談社 (2015-05-22)
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●内容紹介
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1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。

17歳。 無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。

大陸から台湾、そして日本へ。 歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。 台湾生まれ、日本育ち。

超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。 流浪と決断。 圧倒的物語。



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台湾の空気、匂い、歴史的背景 色々なものが詰まった一冊!

祖父が、一体誰に、なぜ殺されたのか?

自身に流れる血のルーツは?

推理小説というジャンルの枠に収まりきらない、壮大な大河・青春群像小説。



Arikaアイコン(小)1153回直木賞受賞作。

台湾、中国、日本を舞台にした、戦争とその後の時代の流れに翻弄された人々の物語。

祖父、葉尊麟(イエ ヅゥンリン)は、大陸山東省出身で、匪賊、やくざ者として大戦中、国民党の遊撃隊に属し、共産党に属す多くの村人を惨殺した。日本が敗戦により大陸から撤退すると、国共内戦は激しさを増し、徐々に追い詰められていく国民党に属していた、祖父は何度も死線をかいくぐり、最後は命からがら家族と仲間達は台湾へ渡る。

台湾に渡った葉一家と兄弟分は台北に住み、祖父は布屋を始め、一家と兄弟分の家族の面倒も見る親分肌で、両親を内戦で亡くした兄弟分の息子も自分の息子として育てる、義理人情には厚い人であった。

妻や息子、娘、他人には厳しい祖父だが、孫である主人公、葉秋生(イエ チョウシェン)には優しかった祖父が、1975年の台湾、国民党の偉大なる総統、蒋介石が死んだ翌月に何者かによって殺された。

そんな祖父が、一体誰に、なぜ殺されたのか?

自身に流れる血のルーツは?

作者東山氏は、自身を投影したと思われる当時17歳の主人公、秋生の祖父殺しの犯人捜しを描きながらも、当時の台湾の世相・文化、家族・親族、祖父の兄弟分との紐帯、秋生の高校生活や仲間との友情、淡い恋物語、そして大陸を渡った自身のルーツを遡るという様々な要素をふんだんに取り込みつつ、まさに推理小説というジャンルの枠に収まりきらない、壮大な大河・青春群像小説とも言える。

台湾の人名、地名、独特の言葉の言い回しなど、多少のとっつきにくさを感じたが、150ページ過ぎたあたりから次々と展開する事態に興味を引かれ、最後200ページまで一気に読めた。真相に近づくにつれて読む手が止まらなかった。登場人物は武骨で気性の激しい性格の人々が多かったけど、家族や友人との絆はとても強くて、憎めない。悪友の小戦、幼馴染だが好きになってしまう2歳年上の毛毛、軍隊を逃げ出し、受験にも失敗する主人公が成長していく様子がよかった。

読み終わって祖父が台湾でどういう思いで家族を育てたのか、心情を想像すると熱いものが込み上げてきた。台湾の歴史や文化、政治について詳しく知らなかったので勉強にもなったし、ミステリー、青春、歴史、恋愛など色々な要素が散りばめられていて、こういうつまった作品はなかなか他にない作品だと思う。もっと重厚な感じかと思えば女の幽霊とゴキブリの下りは爆笑し、まさか幽霊話やコックリさんが祖父殺害の謎を解くヒントになるという変てこさ!謎が解けた後の対峙の場面。所々出てくる、台湾の食べ物がおいしそうで、食べてみたいという欲求にかられた。主人公が子供から大人へ成長する過程に、祖父を殺した犯人を探すミステリや叶わなかった恋愛の要素もあり、まさに大衆小説の魅力を満載した作品だった。

台湾に行ったこともないし歴史もそれほど知らないが、根底には共産党と国民党の戦い・復讐という重たい現実があるのだろうは理解できた。台湾と共産中国の争いの中での青春。国を二分した争いの、復讐、復讐、復讐、血の連鎖が連綿と続く。台湾の複雑さを踏まえながら、汗の匂いと血の色。混沌とした時代の逞しい人々。文化の違い。 1970年代の空気感。日本人の私には説明しづらいのだが、最後に明かされる祖父の大陸的懐の深さは、日本人には決してないものだろう。そして台湾という土地の文化や歴史をもっと知りたくなった。

著者はもちろん、担当編集者もこの大作に賭けたというから、直木賞受賞して報われたことだろう。

祝福とねぎらいを贈りたい。




東山彰良(ひがしやま あきら)

1968年台湾台北市生まれ。2002年「タード・オン・ザ・ラン」で第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞。翌年、本作品を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビュー。

〈作品〉
『路傍』2008年集英社刊=第11回大藪春彦賞受賞。
『ジョニー・ザ・ラビット』08年双葉社刊。
『ブラックライダー』13年新潮社刊=第67回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補。
『ラブコメの法則』14年集英社刊。
『キッド・ザ・ラビット ナイト・オブ・ザ・ホッピング・デッド』14年双葉社刊。
他。





ちょっと珈琲ブレイク
…‥‥…‥‥‥‥‥…★

『流』にあるのは『人間としての思想』

Arika注目1hこんにちは、UAU編集長のArikaです。 

前代未聞の満場一致、選考委員の北方謙三氏に『20年に一度の傑作。とんでもない商売敵を選んでしまった』と言わしめた、第153回直木賞受賞作。

東山氏は台湾出身の作家でこれまでにも推理小説作品で「大藪春彦賞」等を受賞。直木賞候補となった今作『流』は、推理小説の要素を含みながら、自身の祖父の国境を越えた闘いと家族・親族の紐帯、そして祖父の死の解明、自身のルーツを辿りつつ、1970年代の台湾を舞台にした「大河小説」「青春小説」の要素も含んだスケールの大きな作品。

東山 「デビューした当初から祖父の物語を書こうと思っていたんですが、自分にその力があるかどうかわからなかった。今回の小説は実は父親をモデルにしたもので、楽しく書くことができました。こういう形に結実してうれしく思っています。僕自身は台湾で生まれ、日本で育った。そういう者にとってアイデンティティーの問題は常につきまとう。例えば小さいときは台湾と日本を行ったり来たりしていたんですけども、どちらに行ってもちょっとお客さん感覚があって、この社会がなかなか受け入れられないところがあった。その僕にとって家族は確固たるアイデンティティーが持てる場所。後付けになりますが、そんな思いでこの小説を書いたのではないかと、今は思っています」

黄砂のにおい。混沌とした時代の逞しい人々。文化の違い。

装丁の感じからも結構重い話なのだが、著者の性格なのか、軽さと重さが絶妙に混じりあっていて、読むのがすごく楽しかった。

生きる喜びと哀しみと、人を愛することのさまざまなかたちがたくさん詰まった青春小説だった。


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