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(第153回直木賞受賞作品特集!②) 若冲[じゃくちゅう]/澤田瞳子(著)

kage

2015/07/27 (Mon)

直木賞153


直木三十五の名を記念して、芥川賞と同時に昭和10年に制定された。

直木賞…”大衆文芸”を対象とした作品。

各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)あるいは単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。

大衆文芸とは?…「娯楽性」「商業性」を重視!
大衆小説(たいしゅうしょうせつ)、大衆文学(-ぶんがく)とは、純文学に対して、芸術性よりも娯楽性・商業性を重んじる小説の総称である。「娯楽小説」「娯楽文学」も同義語。「通俗小説」「通俗文学」とも呼ばれた。


■直木賞選考委員
浅田次郎、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆき



第153回直木賞候補作
 若冲[じゃくちゅう](文藝春秋)/澤田瞳子(著)

若冲
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澤田 瞳子
文藝春秋
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●内容紹介
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奇才の画家・若冲が生涯挑んだものとは――

今年、生誕300年を迎え、益々注目される画人・伊藤若冲。緻密すぎる構図や大胆な題材、新たな手法で周囲を圧倒した天才は、いったい何ゆえにあれほど鮮麗で、奇抜な構図の作品を世に送り出したのか? デビュー作でいきなり中山義秀賞、次作で新田次郎賞を射止めた注目の作者・澤田瞳子は、そのバックグラウンドを残された作品と史実から丁寧に読み解いていく。

底知れぬ悩みと姿を見せぬ永遠の好敵手――当時の京の都の様子や、池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁、市川君圭ら同時代に活躍した画師たちの生き様も交えつつ、次々に作品を生み出していった唯一無二の画師の生涯を徹底して描いた、芸術小説の白眉といえる傑作だ。



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奇才の絵師『伊藤若冲』。

ひたすら「真実の美」を追求した若冲を突き動かした義弟、家族との相克。

若冲の長き葛藤を見事に描き切った作者渾身の力作!



Arikaアイコン(小)1在した京絵師・伊藤若冲の、壮絶なまでの生き様と緻密な絵に込められた思いを描いた物語。

伊藤若冲こと枡屋(伊藤)源左衛門は、京・錦小路の青物問屋「枡源」の跡取りとして生を受けるが、23歳の時に父を亡くし家督を継ぐが「枡源」の商いは2人の弟の任せきりで、人と会うことも嫌い、世事にも興味を示さず自室に籠もり、ひたすら絵を描くことに耽溺する生活を送る。

伊藤若冲は85歳まで生きた長寿の人であり、その長い人生に於いて多数の作品を残した。観る者を圧倒する美しさと奇抜な構図、表現方法の絵画を多数。美しきものはやがて衰え死に至る。江戸中期の当時は多数の著名絵師と共に「花鳥画」の権威として「平安人物誌」にも掲載されるほどの知名度もあった。しかし明治期以降、若冲は長く忘れられた存在となり、その評価も決して高いものではなかった。「若冲」の名が世間に再び認知される様になったのは近年のことであり、特に1990年以降その超絶技巧と奇抜な構成は高い評価を受けている。

若冲はその長い人生で、表面上の美しさだけではない「美の本質」を追求し続けた。江戸中期、京・錦小路の青物問屋「枡源」の主人でありながら家督を弟に譲り、絵画に没頭する隠遁生活を送る。家族・親戚とも距離を置き、家族からは疎まれ、特に嫁入りしてすぐに自死した亡き妻を巡る人間関係、若冲への恨みを剥き出しに若冲の贋作を描き続ける義弟、市川君圭との相克、亡き妻への思いに懊悩しながら描画に没頭する姿を描きながらも、若冲のその絵画の細部に至る描写までまるで眼前に迫り来るような筆致で見事に文章で表現している。

初見の印象は物語が進むに連れ変化する。この物語の中の若冲は、不器用にしか生きられなかった哀しみの上に、絵師としての成功が成り立ったとされている。徹底的に史料を読み込み、若冲が長きに渡って苦しみ、その苦しみを自身の絵画に投影し、芸術とは何か?家族とは何か?人間関係に愛憎とは何か?というテーマまで本作を昇華させたのは、著者の筆力の成せる技であろう。小説がどれだけ史実に添っているのかわからないが、後悔や憎悪が作品への思いを増幅させる…。史実とされる部分とは異なる部分もあるものの「生あるものには必ず死がある」「だからこそ、そこに美はある」といった様な若冲の死生観と美的感覚は、なぜ生まれたのか?と言った作風の背景の裏には、亡き妻を救えなかったことを悔い、誰にも伝わらない理解されないという底知れぬ孤独、葛藤、悲哀、これらと戦いながら、魂の救済たるべく、絵師は筆を進める。生業ではなく誰かに捧げるでもなく、ただ己の為だけの絵を描く日々。

若冲が長い人生に於いて、多数の魂の籠もった作品を残した、その原動力となったものは市川君圭との相克であり、その相克の理由となったものは何なのか?という著者の内面の心理描写の巧みさが実際の「若冲」の絵画作品と本作「若冲」に深みをもたらしている。著者は、若冲の繊細かつ色彩豊かで一見華やかで美しい作品に陰を見い出し、その奇抜な構成の裏にある若冲の心の深淵にある懊悩、若冲を超絶技巧の絵師とまで突き動かした義弟、市川君圭との相克、衝動といった若冲の心奥を見事に小説作品として完成させた。

ストーリー、人物描写、心情の動き、ともに素晴らしい。自分を責め苦悩した若冲を描くことによって、より鮮明なものとして読む者に迫って来る。感情の在処を隠し他人を寄せ付けぬ空気。苦しみが作り上げる形は美と醜、強さ弱さが複雑に絡み合う泥臭いというか人間臭い若冲像の設定と解釈はユニークで説得力もある。読んでいて 円山応挙との比較が面白かった。応挙は己を空っぽにして、ただただ人の眼を楽しませるために描く。一方、若冲は自分の苦しみや悲しみを画布にぶつける。生の喜びの欠落。でも、それが三百年後の今、熱狂的に支持されているのがとても面白い。

どこまでが事実で、どこからがフィクションか分からないが、壮絶である。偉大なる芸術は、大いなる偏りから生まれる。しみじみとそう思える生き様だった。 精緻で鮮やかで強くて鋭い、若冲の絵に懸けるアツい思いは十二分に伝わってきた。奇才な絵師がどんな生き方や考え方をしたのか想像するだけで面白いが、他の人が書く若冲があるならそれも読んでみたい。




澤田瞳子(さわだ とうこ)

1977年京都府京都市生まれ。2002年同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了。10年『孤鷹の天』でデビュー。

〈作品〉
『孤鷹の天』2010年徳間書店刊=第17回中山義秀文学賞受賞。
『満つる月の如し』12年徳間書店刊=第2回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、第32回新田次郎文学賞受賞。
『日輪の賦』13年幻冬舎刊。
『ふたり女房』13年徳間書店刊。
『夢も定かに』13年中央公論新社刊。
『関越えの夜』14年徳間書店刊。
『泣くな道真』14年集英社文庫刊。
他。





ちょっと珈琲ブレイク
…‥‥…‥‥‥‥‥…★

精緻で鮮やかで強くて鋭い!

Arika注目1hこんにちは、UAU編集長のArikaです。 

本作は歴史小説、美術小説の体を成しつつも、何より「人間 伊藤若冲」を描いています。

その内面描写は現代にも変わらず通ずるものがあるだろう。

そういう意味では近年出版され歴史上の「絵師」を描いて人気を集めている山本兼一氏『花鳥の夢』や安部龍太郎氏『等伯』にも全く引けを取らない素晴らしい作品です。

この夏、近くで「若冲と蕪村展」があるので出かけてみたいです。



花鳥の夢/文藝春秋

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狩野派を引き継ぎ変革した天才の生涯。

安土桃山時代。足利義輝、織田信長、豊臣秀吉と、権力者たちの要望に応え「洛中洛外図」、「四季花鳥図」、「唐獅子図」など時代を拓く絵を描いた狩野家の棟梁・永徳。ライバル長谷川等伯への嫉妬、戦乱で焼け落ちる己の絵、秘めた恋。乱世に翻弄されながら大輪の芸術の華を咲かせたその苦悩と歓喜の生涯を描いた長篇。


等伯 〈上〉/日本経済新聞出版社

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等伯 〈下〉/日本経済新聞出版社

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第148回(平成24年度上半期) 直木賞受賞。

都に出て天下一の絵師になる――武家から養家に出された能登の絵仏師・長谷川信春の強い想いが、戦国の世にあって次々と悲劇を呼ぶ。身近な者の死、戦乱の殺戮……それでも真実を見るのが絵師。その焦熱の道はどこへ。

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