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(第153回直木賞受賞作品特集!⑥) 永い言い訳 /西川美和(著)<

kage

2015/07/31 (Fri)

直木賞153


直木三十五の名を記念して、芥川賞と同時に昭和10年に制定された。

直木賞…”大衆文芸”を対象とした作品。

各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)あるいは単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。

大衆文芸とは?…「娯楽性」「商業性」を重視!
大衆小説(たいしゅうしょうせつ)、大衆文学(-ぶんがく)とは、純文学に対して、芸術性よりも娯楽性・商業性を重んじる小説の総称である。「娯楽小説」「娯楽文学」も同義語。「通俗小説」「通俗文学」とも呼ばれた。


■直木賞選考委員
浅田次郎、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆき



第153回直木賞候補作
  永い言い訳(文藝春秋) /西川美和(著)

永い言い訳/文藝春秋

¥1,728
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●内容紹介
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長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。 悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。

突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。 人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。



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愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償は小さくない。

別の人を愛せばいいわけではない。

大切な人を失って半年も

そんなことから目を背け続けた男は案外どこにでもいそうである。

「喪失」と「悔恨」の物語、失って初めて知る失ったものの実相は悲しい。



Arikaアイコン(小)1うしようもない小説家の津村啓。突然のバスの事故で妻を失った作家が、同じく母を失った家族と出会い、自分と向き合っていく物語。子供を通して、誰かに必要とされることの意味や、それまでの自分の妻に対する言動を見直していく津村。遺された者が、失った人をどう想いながら、どう生きていくのか、喪失から生まれた感情の変動を綴った一冊。

事故で妻をなくした小説家と、同じ事故で母親をなくしたトラック運転手と中学受験を控えて男の子と幼稚園児の女の子の家族の交流を書いた物語。主人公夫婦は決して仲のいい夫婦ではなかったのに、離れると思っていなかった人が突然いなくなる喪失感。人生うらおもてというが、実際はそんな単純なものではない。人の内面もまたしかり。不慮の事故で亡くなった二人の妻。遺されたのは「哀しみが分からない夫」と「目の前の現実(子供)より妻への思慕にしがみつく夫」、どちらもダメな夫である。哀しみがわからない冷めた夫は苦しんでないようでいて苦しみ、もがいてる様がキレイごとではないのが良かった。感情的じゃなく冷めているようでいて、事故で近親者を亡くし憤る人ばかりじゃないって現実的な感じが良かった。対する3人家族の父は真逆でまっとうなんだけど苦手だなと思ってしまった。

一番共感できたのは真ちゃんでした。 二人の子どもの存在がとてもいい。いろんな人との出会いは喪失の記憶を癒さない。しかし日常の雑事に紛れることもあれば、新たな気付きもある。大切な人を失って半年もそんなことから目を背け続けた男は案外どこにでもいそうだと思った。

「生きているなら、どうにでもなる。死が分かつまでは、人間同士は何とかなる。」。

人生はどんなことが起こるかわかりません。どんなに後悔しても戻ってきません。遺されたものは、後悔と寂しさと…どうしようもない感情に押しつぶされてしまうでしょう。主人公は、妻を亡くし、泣くことができませんでした。死とも向き合っていませんでした。でも次第に変わる心に、最後の言葉に、涙が流れました。悲しいばかりの作品ではなく怒ったり笑ったりしました。読んで本当によかった。 人間関係とは、なんとも希薄であり、濃密であり、そして不安定なものなのか。自分が立っている世界や存在意義について、考えさせられた。 私など、見栄っ張り・意地っ張り・小心者・慎重・うかつもの・ずるい・正義感は都合のつく分だけ・・・等々、数え上げたら切りが無い。そんな人間の内面を、また人それぞれをリアルに描き、そして最後には人それぞれを前向きに肯定する、私にとっては最後にやっとほっとするような作品でした。

主人公は太宰治『人間失格』 の葉ちゃんに何か通じるものがある。 妻を亡くしてもからっぽで、そこに愛情はない。失って初めて知る失ったものの実相は悲しい。「 必要とされること。愛すること。愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償は小さくない。」のです。

最後に流す涙・・・なんだかいろんなことを思い、しみじみさせられた。 さすが映画監督、日常生活や人への観察力が凄い。言い回しも豊富で的確です。作品のテーマや主人公の苦悩の内面描写力、物語途中からの独創性は相変わらず素晴らしいのです。

家族との交流の中で変化していく小説家の心情が、西川さんの乾いた筆致で美しく紙面の上を流れていきます。

涙するところばかりでなく、時折挿まれる笑いを誘う場面や心が痛む場面、さすが映画監督だなあと思います。

妙に映像的に思い浮かぶので、その情景がしんみりと胸に迫り、 ちょいちょい鼻の奥がツーンとなってしまい、外では読み辛かったです。



西川美和(にしかわ みわ)

1974年広島県広島市生まれ。早稲田大学卒業。2006年自作の映画の原案小説『ゆれる』でデビュー。

〈作品〉
『ゆれる』2006年ポプラ社刊=第20回三島由紀夫賞候補。
『きのうの神さま』09年ポプラ社刊=第141回直木賞候補。
『その日東京駅五時二十五分発』12年新潮社刊。
『永い言い訳』15年文藝春秋刊=第28回山本周五郎賞候補、他。




ちょっと珈琲ブレイク
…‥‥…‥‥‥‥‥…★

大切にしてこなかった人を突然失った者の後悔と再生。

・・・ふと立ち止り、自分と関わりのある人達の事を考えた!


Arika注目1hこんにちは、UAU編集長のArikaです。 

西川美和氏は映画の世界で活躍され、映画監督・脚本家として活動する傍ら、作家としての才能も発揮し、文学の世界でも高い評価を受けています。

また今回候補作『永い言い訳』は第28回「山本周五郎賞」候補作にもなりました。

自ら監督・脚本を手掛けた映画「ゆれる」では、カンヌ国際映画祭監督週刊に出品。

自身でノベライズした『ゆれる』では第20回三島賞候補。

『きのうの神さま』では第141回直木賞候補にノミネートされる等、映画、文学の両方の世界で高い評価を受け、多彩な才能を発揮しています。

大切にしてこなかった人を突然失った者の後悔と再生。死んだらそれでサヨウナラ。残された方は死なれた方には何もできない後悔の念にかられながらも(一生!)生きていく。 つらい、過酷な小説だが、大切な痛みを感じることができる良作。

・・・ふと立ち止り、自分と関わりのある人達の事を考えた。


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