(11月の特集)時代小説・歴史小説その2〈二冊合わせて読んで欲しい「江戸小説」5冊〉

2015/11/10 (Tue)
2015年11月のテーマ特集本

時代小説といえば「江戸時代」。
鎖国された社会でありながら文化に富み、循環社会でもあったことから環境面でも注目されています。
漢字や侍にあこがれを抱くのは欧米の若者というイメージでしたが、日本人も江戸にさまざまな思いを馳せているのです。
凛としながら温かい江戸人情・・・・・・・作家にもご注目ください。
二冊合わせて読んで欲しい「江戸小説」5冊
師弟(?)作家の時代小説をどうぞ!!
日日平安―青春時代小説 (時代小説文庫)/角川春樹事務所

¥617
Amazon.co.jp
冬の標 (文春文庫)/文藝春秋

¥669
Amazon.co.jp

前者は映画『椿三十郎』の原作になった『日日平安』のほか、若者が主役のユーモアあふれる作品6編。表題作の原作の主人公はそんなに腕が立つわけでなく、食と職にありつくために無い知恵を振り絞る行き当たりばったりの侍。でもユーモアあふれる中の緊張した状況。そして菅田の去り際の潔さと、その後の腹の虫との会話に微苦笑。それよりも「鶴は帰りぬ」という短編が最高!不器用な若い男女の恋の話なんだが、山本周五郎の小説でこんなに胸キュンするとは思わなかった(笑)。「貧しくつましい暮らしをしている者には、小さな喜びがどんなにも幸福に感じられるものだ...」こんな一節が心に沁みる。山本周五郎の小説世界は限りなく温かく、山本周五郎の書く侍は誰しも一本筋が通っていて気持ち良い。
後者『冬の標』は、幕末、小藩の武家の娘が画家になる夢を捨てずに葛藤する感動長編小説。幕末、下総小藩の裕福な武家の娘、明世は絵を描くことに魅せられる。しかし、世間の仕来りは女子に描くことを許さない。結局、嫁ぎ夫と姑に使えるが描くことへの情熱は消えない…。明世が、結婚、子育て、貧困、義母の介護、思い人の死などさまざまな苦難を乗り越え、絵の道にたどり着く。内容に反してとても静かな語り口なので、読んだ後に音が残らない。 女というだけで世間の仕来りが彼女の進む道を阻む。苦悩する明世。彼女の幸せではない気持ちがしんとさせる。激動の幕末に向かい彼女はどこにむかうのか、それが読者を惹きつける。
師弟(?)いずれも女性の描き方がいいので読み比べを楽しんでいただけたら幸いです。
すべてが終わったそのあとには、夢かと見粉う一輪の赤いろうずが咲いていた!
輪違屋糸里 上 (文春文庫)/文藝春秋

¥637
Amazon.co.jp
輪違屋糸里 下 (文春文庫)/文藝春秋

¥637
Amazon.co.jp

「神さんってのは妙なものさね。親切なんだか意地悪なんだかわかりゃしない。」
金も夢も、人の情けもなくしても、一人の男と一緒に毀れることができるのであれば、神も信じてみようというもの。これもまた、眦(まなじり)を決した花魁道中といえましょう。たとえ誰一人、褒め称えて見る者はいなくとも・・・。
『八犬伝』を残した女の奮闘記!
感想、「江戸バージョン渡鬼」なので橋田センセイ次はこれで是非お願いします(笑)
馬琴の嫁 (講談社文庫)/講談社

¥580
Amazon.co.jp

南総里見八犬伝 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス (SP90))/角川学芸出版

¥864
Amazon.co.jp
ちなみに私なら、絶対に無理!こんな人達に一生を捧げるなんていや!・・・いや、ほんと、「みち、あなた本当に良くやったよ、頑張ったよ」と言って肩を抱いてやりたくなります。持ち前の明るさがあるからこんなに頑張れたんだろうけど・・・私には本当に無理!だけど・・・こういう強さのある女性にはいいな憧れるなぁはあります。世の中の女性達よ、我慢せよといっているわけではないですが、心構え一つであなたの人生変わるかも知れません。感想としては「江戸バージョン渡鬼」なので橋田センセイ次はこれで是非お願いしますの気持ちで渦巻いています(笑)。
何度読んでも爽やかな感動がある!
橋ものがたり (新潮文庫)/新潮社

¥680
Amazon.co.jp
驟(はし)り雨 (新潮文庫)/新潮社

¥637
Amazon.co.jp

前者は橋を往来する人々の哀感を、後者は雨宿りの間に小悪党の男の心が変化していくさまを見事に描く作品です。いずれも江戸下町に生きる庶民の悲喜交々を全10編ずつ収めた珠玉の作品集です。毎日一編ずつ眠りにつく前に読むのはどうでしょう。情緒も人情もあらばこそといった現在、藤沢周平作品を愛読する読者が多いことこそ希望であり未来なのです。
女性ならではの細かな視線で描く江戸情緒!
初ものがたり (新潮文庫)/新潮社

¥594
Amazon.co.jp
余寒の雪 (文春文庫)/文藝春秋

¥605
Amazon.co.jp

宮部みゆき『初ものがたり』は、岡っ引きの茂七が本所深川界隈で起こる難事件に挑む連作ミスタリー。事件の裏に絡む男と女、兄弟、親子の情の悲しさは宮部みゆき作品ならでは。脇役の面々も魅力的です。また鰹、白魚、柿羊羹など江戸の四季を象徴するおいしいものの数々にもうっとり。
宇江佐真理『余寒の雪』は中山義秀文学賞を受賞した7話の短編集。強がりの影に見え隠れする女心の弱さとか可愛らしさ、それを黙って包み込む男のカッコよさに痺れます。江戸時代の追っかけファッションやお洒落なボトルの化粧水も登場します。
女性ならではの細かな視線で描く江戸情緒、時代は変わってもおいしいものとカッコイイものを求める女性の心理は変わらないものですね。

■当ブログを「厳選!書籍全般レビューブログ」の1つとして紹介させて頂いております。
■新書・文庫本に関する人気のおすすめ感想ブログ・書評レビューまとめランキングサイト
新書・文庫本マニア
あなたの大好きな新書・文庫本の情報を探してみませんか?
新書・文庫本マニアは、おすすめ情報・感想ブログ・書評レビュー・Twitter・ニュース・Q&Aなど、話題になっている口コミ・記事をまとめた本の人気ランキングサイトです。
様々な切り口から、あなたの大好きな新書・文庫本の情報を探してみませんか?
- 関連記事
-
- (12月特集)年の瀬に贈りたい、贈られたい、ギフトブック「年賀状の準備」 (2015/12/26)
- (12月特集)年の瀬に贈りたい、贈られたい、ギフトブック「旅に出たくなる本」6冊 (2015/12/22)
- (12月特集)年の瀬に贈りたい、贈られたい、ギフトブック「クリスマス気分を盛り上げる絵本」4冊 (2015/12/16)
- (12月特集)年の瀬に贈りたい、贈られたい、ギフトブック「クリスマス気分を盛り上げる本 」 (2015/12/13)
- (12月特集)年の瀬に贈りたい、贈られたい、ギフトブック「コタツでのんびり読みたい本」の9冊 (2015/12/10)
- (11月の特集)時代小説・歴史小説その2〈 知っていると楽しみも倍増! 日本の歴史と文化風習がすぐ学べる 「時代考証おもしろ事典」2冊 〉 (2015/12/03)
- (11月の特集)時代小説・歴史小説その2〈時代と宿命に翻弄されながら、恋に生き、自分を生きた者たちの波乱の「女の生き方」3冊 〉 (2015/12/01)
- (11月の特集)時代小説・歴史小説その2〈この世の謎と不思議と面白さの3冊 〉 (2015/11/28)
- (11月の特集)時代小説・歴史小説その2〈人間の弱さと愚かさと愛しさの3冊 〉 (2015/11/25)
- (11月の特集)時代小説・歴史小説その2〈袖すり合うも多生の縁――。 笑えて泣けてじんとくる、「温かく優しいお江戸人情噺」9冊 〉 (2015/11/22)
【特集】池井戸潤作品★苦悩する中間管理職列伝4/4『ルーズヴェルト・ゲーム』≪ | HOME | ≫(ジャケット買いしたCD)『超ハジバム。』ハジ→
コメントフォーム

この記事へのトラックバック

この記事のトラックバックURL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
【特集】池井戸潤作品★苦悩する中間管理職列伝4/4『ルーズヴェルト・ゲーム』≪ | HOME | ≫(ジャケット買いしたCD)『超ハジバム。』ハジ→