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(小説で読み解く「女の一生」2⃣)「スタッキング可能」松田青子(著)

kage

2016/06/10 (Fri)

女の一生1

女の生き方を題材にした注目作が、女性作家により近年多数刊行されている。

4つの側面に分けて、いま読むべき作家をご紹介。


アイコンりす今回の書籍案内人・・・・Arika


2⃣自分だけの価値観を探す
現代社会に生きる女性が、自分だけの生き方を模索した先にあるものは・・・


不意打ちされるセンスと洒落た文学・・・松田青子

若者、特に女性の理不尽なシュールに描く作風で注目を浴びる。

シュールなような、写実のような。不思議な味わいの実験的な要素の多分とある作品が多い。

岸本佐知子、青木淳吾、福永信、古川日出男あたりに通じる不意打ちされるセンスと洒落た文学で魅了する。



 スタッキング可能/松田青子(著)

スタッキング可能/河出書房新社

¥1,620
Amazon.co.jp

Arikaアイコン(小)1“あなた”と“私”は入れ替え可能?
鋭い視点が斬新で、女性ならではの社会哲学がシュールで面白い!!

A、B、Cというように、記号で呼ばれる人物たちの群像劇。誰が誰だかわからなくても問題はない。彼ら、彼女らはどこにでもおり、タイトル通りスタッキング可能な人物なのだから…。どこかのオフィスビルで働く人々が次々に登場する。いろんな職場があるのに、どこも同じような人がいて、同じような会話があって。アノ人もコノ人も、そして私だって入れ替わり可能。それをエレベーターの階数表示を使うことで表す発想も、繰り広げられる会話も面白かった。抱えてた職場の悩みだって、スタッキング可能と思えるこの視点。TVのチャンネルが切り替わるように各々のスタッキング可能な意識がエレベーターという通路によって一瞬つながったり切り替わったり。 そこからはみ出すような毒や疎外感やひと匙ほどの狂気も、スタッキングマグに注がれたインスタントコーヒーほどの苦さか、と思わせておきながら、どうにも得体の知れぬねじくれた異様さをも滲ませる匙加減が絶妙さ。

「本音」と「建前」が絡み合う重層構造を表現する手法として、極めて適したやり方だと思う。社会にはいろんな人がいて皆それぞれが違うはずなのに、スタッキング可能な椅子のように積み重なって境界は曖昧となるオフィスの情景。女の幸せを生き方を客観的に「もうすぐ結婚する女」と一括りにして描き出したり。ものすごく独特の語り調子に飲まれて混乱して笑ってしまう。エレベーターの縦軸におけるスタッキングの可能性と、フロアの横軸におけるスタッキングの不可能性をあらわにする著者の視点は非常に冷めた、容赦のないものである。しかし、物語全体としてはとても前向きなトーンを感じさせるところがいい。人間が皆所詮、だれか他の人とスタッキング可能な存在だとしても、そのこと自体を笑い飛ばすような、明るさは好き。

職場の代替可能な社員たちの様子を活写した表題作ほか「マーガレットは植える」「もうすぐ結婚する女」、さらには連作掌編「ウオーター・プルーフ嘘ばっかり! 」などユニークな短編6編が並ぶ。個人的にはもっともっと心情の起伏を感じたいところではあるけれども、テクニック的な面ではこれがデビュー作とは信じがたい申し分なしのセンスと洒落た感性である。



松田青子(まつだ あおこ)

1979年10月11日誕生。

日本の翻訳家、小説家、童話作家で元女優。

松田青子というペンネームにしたのは、本人が松田聖子にあこがれていて、読者が「まつだ せいこ」と読み間違えたら面白いと考えたためである。

☑経歴
兵庫県出身。同志社大学文学部英文科卒業。大学在学中の1999年に劇団「ヨーロッパ企画」に音響スタッフとして参加。その後、2000年のヨーロッパ企画第5回公演『苦悩のピラミッダー』から役者として参加するようになり、2007年のヨーロッパ企画第25回公演『火星の倉庫』の出演まで役者のみならず文芸助手としても活動していた。

その一方で、同志社大学卒業後はヨーロッパ企画での役者活動と平行して、契約社員やフリーターとして職を転々としながら、翻訳学校に通い翻訳家を志すようになった。やがて、ブログで発表していた文章を作家の福永信に注目され、2008年1月に柴崎友香や長嶋有らの参加する同人誌「イルクーツク2」に小説『シャンプーアンドリンス』をゲスト寄稿した。

2008年9月に9年間在籍したヨーロッパ企画を退団、それと同じくしてこれまでの本名である松田暢子からペンネームである松田青子に変更して活動するようになった。

2010年、「早稲田文学」に戯曲形式の『ウォータープルーフ嘘ばっかり!』を発表して作家デビュー。

2013年に初の単行本『スタッキング可能』を刊行、第26回三島由紀夫賞候補、第35回野間文芸新人賞候補にあがる。




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