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(マンガで読み解く「女の一生」1⃣)「恋と病熱」「王女の条件」磯谷友紀

kage

2016/06/24 (Fri)

マンガ読むとく「女の人生」


女の一生にとっての大きな要素を4キーワード設定。

それらの様相を巧みに描き出す、いま注目のマンガ家をご紹介。


アイコンりす今回の書籍案内人・・・・Arika


1⃣甘いだけじゃない、
幸せになりたい「だけ」なのに、その「だけ」が難しい。

恋する者たちの、心のやりとりの軌跡。



ドラマチックなストーリーテリングが魅力…磯谷友紀

2004年Kissストーリーマンガ大賞で入選、

翌年に読み切り『スノウフル』にて、「One more Kiss」(講談社)よりデビュー。

初連載の『本屋の森のあかり』は12巻続く人気連載となる。

物語のジャンルを問わず、

かわいらしくも悩み多き等身大のキャラクター造形と、ドラマチックなストーリーテリングが魅力。

 恋と病熱/磯谷友紀(著)

恋と病熱 (A.L.C.DXもっと!)/秋田書店

¥734
Amazon.co.jp

Arikaアイコン(小)1一人っ子が当たり前になり、
兄弟姉妹がタブーとなった未来(おそらく)を描いた連作集――。

代表作『本屋の森のあかり』から一転、磯谷が描くファンタジー『恋と病熱』は、兄弟姉妹の存在が忌み嫌われる不思議な世界の恋の物語。一人っ子政策からかなり経って子供は一人であることが当たり前の世界で第二子は忌み嫌われる世界でのオムニバス形式。兄妹、姉弟、三姉妹、兄弟。二子は速やかに養子に出されてしまう世界で、家族というより恋愛に近い感情で相手を特別視してしまう。「兄弟姉妹が忌み嫌われる社会」という設定の下に様々な形の兄弟姉妹を短編連作として描く本作は、世界観設定の面白味もあり、各話それぞれの恋愛模様のバリエーションの豊かさもあり、描写自体の美しさもあります。各話ともキャラの初期配置に大きな工夫があるものの、それだけに終わらず、キャラクターの心情の変化も短い中でしっかり描かれています。

タイトルには「恋」の文字がありますが、メインで描かれているのは恋愛関係というよりも兄妹、姉弟、三姉妹、兄弟の4組6話+エキストラの周囲の関係だと思います。恋愛なのか家族愛的なものなのか判らないものもありますが、兄弟に関しては同性愛も絡むので、たぶん意図的にぼかしてるのかもしれません。どの話も倒錯を何重にも重ねていて、けどその倒錯感やタブー感に酔うだけの話かと言うとそうではなくて、ディストピア物的な自由と管理・危険と安定のジレンマもあり、もちろん恋愛物の部分もあり、異性愛と兄弟愛と家族愛と同性愛、そしてそれぞれの憎悪、あと文化的差別とか偏見とかが絡まっていてなかなか凄い濃さ。兄弟姉妹がいることだけで異常とされるのは現代の我々からするとディストピア的抑圧と偏見だけど、じゃあ作中それへのカウンターの一種として出る兄弟姉妹で恋愛するのを良いとも言い切れない危うさ。もしも二人目が生まれてしまった時には内密に養子に出されるが、しかし巡り合った時には絶対に強烈に惹かれあってしまう、という存在…。攻めてます。妹に怪我を抱えた膝をギリギリ踏まれてうっとりする兄とか、倒錯した世界が好きな私にはかなりトキメキポイントが多かった。これら近親愛が気持ち悪いと思われるのは、宗教や習俗による文化的背景でしかないのだろう。 

「男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思うの」という名言があるが、さしずめこの作品は「兄弟や姉妹は、兄弟や姉妹同士で恋愛すればいいと思うの」という感じかと思いきや、作品内で兄妹の関係がはっきりと恋愛関係だと言えるものはなく、どちらかというと、現実とは少し世界観をずらして「兄弟、姉妹とは何か」ということを問うた作品です。野暮を承知で言えば、最後「この二人この後どうすんだろう」と、やや中途半端に思わなくはなかったものの、オスカーとマルセルに至っては、完全に女装BLだし、そこから先は読者が想像してください、むしろ余韻として妄想を楽しんでください(巻末のEXTRAで軽く触れられもしている)だろう。私たちはいったい何のために恋をするのだろうか? そして世界は変わって欲しい。タイトルは宮沢賢治の詩も同じ物があるらしい 。




 王女の条件/磯谷友紀(著)

王女の条件 1 (花とゆめCOMICS)/白泉社

¥616
Amazon.co.jp

Arikaアイコン(小)1この人の描く女性のエゴはすごく好き。
条件は跡継ぎか、能力か。
諸勢力は次の女王の夫となるため画策――。

舞台となるのは、女系を正統の王につける制度をもつ架空の欧風国家・ブラガンサ王国。女王が崩御したため3年後に新王を選び出すことが決まり、候補である2人の王女姉妹どちらかが次なる冠を戴くことになっている。

したたかに知恵をめぐらせ、国のすべてを手に入れようとする戦略家の姉姫・エストレーラ(16歳)

まだあどけなさを残し、ただ自分が愛する者と結ばれたいと夢想するおっとりした野心のない異母妹姫・ルア(14歳)。

能力・評判的には姉が有利であるものの、先に後継者を産む者が即位する可能性が高いとあって、野心を持ってニ人に近づく男は後を絶たない。ニ人ともが肉体関係をもつ従兄をはじめ、新女王の夫の座を狙う諸侯の思惑がからまり権力欲と陰謀と情念と愛ががぐるぐる渦巻く宮廷劇ロマンス&サスペンスになっている。登場人物は結婚、セックス、妊娠を跡継ぎ作り、つまり次期王座をたしかにするための手段として非常にドライにあつかっているためか、傾国のなんたらじゃないが王族たるもの種は選ぶべきではあるけどそれに情をうつすべきではない、 という独特の感触で読み進めることができる。そのうえで本作が面白いのは、メインとなる姉妹の望みと実際のなりゆきが絶妙に食い違っていく流れになっていることだ。

姉・エストレーラは大人びており、賢さを武器に強く王座を求めていく。しかし妹姫をだまして優位に立とうとした策が、じつはすでに自分のほうがハマっているものだったなど抜かりが多く、空回りによって泣きを見る姿は、逆に幼い風情をかもしだしている。姉姫が自分を賢いと思ってる時点でかなり痛い娘。妹姫の方がむしろ上。一方、妹・ルアはお人よしで王座に興味が薄く、「愛に生きます」と無邪気に決意する少女。自分の気持ちに正直なゆえに、従兄のほかにも他国の使者へふらりと浮気してしまう。そのせいで結果的に大人の火遊びと政治的な立ち回りをしたかたちとなり、しまいには妊娠を機に一気に王座へ近づいてしまう。妹は・・・実は意外と策士なんじゃないかも? 

姉妹二人してこのままアフォンソお兄様に執着するのか、別の男に走るのか。ルアに女児が産まれるのかどうかも気になります。とはいうものの、まだまだ姉妹とも知性と戦略が足りない感じで五十歩百歩やな。今は政治をほぼ姉が行ってる印象だけど(でも挨拶くらいしかしてないから実権は臣下に握られてる?)、ここから妹が王になっても信頼が得られるのかも謎。当事者は自分たちの置かれている状況が完全には把握できておらず、周りにはそれを利用しようとする人たちの欲望と陰謀と戦略がドロドロ渦巻いてて、もっとやれって気持ちです。 物語のジャンルを問わず、個人の動向がもっと大きなうねりによって意図とは全然異なる方向へ作用していく展開というのは、「運命的」「ドラマティック」という印象を生み出す源になる。あっさり絵とあっさりした描き方なのに、物語は全然あっさりじゃない昼ドラ顔負けの人間関係。そのギャップがすごい。絵も描写もあっさりしているのが、逆に奥行きを感じさせる。それぞれの陣営がなぜその王女を推すのかもいずれ明かされるのでしょうか…いやはや楽しみです。 徐々に謎解きがあると信じて、2巻に期待します。




磯谷 友紀(いそや ゆき)

8月22日生まれ。愛知県豊田市出身。

2004年、講談社のKissストーリーマンガ大賞に「スノウフル」が入賞し、翌2005年、同作が『One more Kiss』(2005年5月号、講談社)に掲載されてデビュー。

2012年12月まで、『Kiss PLUS』(講談社)にて初連載となる「本屋の森のあかり」を連載した。

2014年1月より、『Kiss』(講談社)にて「海とドリトル」を連載開始。

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