≪谷崎に多大なる影響を与えた師①≫ポオ小説全集 4/エドガー・アラン・ポオ (著) 丸谷 才一 (訳)

2016/12/10 (Sat)

谷崎潤一郎の没後51年目の2016年。
明治・大正・昭和の長きにわたる作家生活で、
数多くの傑作を生み出した文豪の魅力をひもとく21冊をご紹介。
耽美にして繊細、それが私が谷崎潤一郎に抱くイメージです。

谷崎に多大なる影響を与えた師①
ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)/東京創元社

¥734
Amazon.co.jp
■収録作品
黄金虫
黒猫
長方形の箱
不条理の天使
お前が犯人だ
ウィサヒコンの朝
シェヘラザーデの千二夜の物語
ミイラとの論争
天邪鬼
タール博士とフェザー教授の療法
ヴァルドマアル氏の病症の真相
盗まれた手紙
アモンティリャアドの酒樽
アルンハイムの地所
メロンタ・タウタ
ちんば蛙
Xだらけの社説
フォン・ケンペレンと彼の発見
ランダーの別荘
スフィンクス
暗号論
探偵作家としてのエドガー・ポオ 江戸川乱歩著

アメリカ最大の文豪であり、怪奇と幻想、狂気と理性の中に美を追求した作家
ポオ全集の最終巻。怪奇、幻想、SF、風刺、冒険、ブラックユーモアなどあらゆるジャンルに傑作を残したポオの小説世界を完全収録した全集。彼の晩年の作品が納められた、この4巻はその全ての要素が楽しめます。どの作品も安定して面白いので、ポーを最初に読むならこの本がいいでしょう。
宝探しと暗号解読が混然一体となった「黄金虫」、黒猫に人生を狂わされた男を描いた「黒猫」、男が船に持ってきた箱の中身が意外な「長方形の箱」、今なお多くのミステリに使われ続ける「意外な犯人」を描いた「犯人はお前だ」、精神病院に招かれた私の前で繰り広げらる騒乱を描いた「タール博士とフェザー教授の療法」、そしてデュパンもの最後の短編にして乱歩も絶賛する単純にして盲点をつくトリックが炸裂する「盗まれた手紙」が特に印象に残った。最後の江戸川乱歩によるポオ論もミステリファンなら一読の価値あり‼ 乱歩曰く、ポー無くしてホームズは誕生しなかった。ということは、私の好きな金田一シリーズも誕生しなかっただろう。乱歩からポオを知った私にとっては興味深い解説でした。特に「ポオはその作品において常に彼自身を描いた…。」と言っているのには大いに同感です。仰々しく、人を喰ったような語り、真摯な愛はポオ自身の人間性から来ているのでしょう。
怪奇や幻想がメインではなく、緻密な分析の視点がどの作品でも窺えるのがポオの凄さ。トリックが問題なのではなく、そこに至るまでの論理展開が愉しい。観察眼が鋭いことがよく分かる。 そして、最後数行での話の落とし方が絶妙。ポオに影響された作家は数知れません。なかでも有名なのが,コナン・ドイルと江戸川乱歩。ポーが天才だった事は間違いないでしょうが、天才と気違いは紙一重…という典型でもあったのでしょう。逆に、現代では誕生し得ない作家だと思います。4巻に収録されている短編「アルンハイムの地所」に触発された谷崎が後に『金色の死』を執筆したといわれています。
エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)
┣1809年1月19日 - 1849年10月7日
┣アメリカ合衆国の小説家、詩人、評論家
┣ポーはアメリカにおいて文筆だけで身を立てようとした最初の著名な作家であったが、文名を得てからもその生活はほぼ常に貧窮の中にあった[1]。その作品は当初は本国よりもむしろヨーロッパで評価され、特にボードレールによるポーの翻訳はフランス象徴派の文学観形成に大きく寄与した。またポーが「モルグ街の殺人」で作り出したC・オーギュスト・デュパンの人物像は以後の推理小説における探偵の原型となっており、そのほか科学的知見を取り入れた『アーサー・ゴードン・ピムの物語』などの冒険譚はジュール・ヴェルヌら後世のSF作家にも影響を与えている。
└──────────────────────────────────
- 関連記事
-
- ≪資料で読み解く谷崎ノンフィクション(6)≫日本文学(墓)全集 時どきスイーツ/安堂友子 (著) (2016/12/21)
- ≪資料で読み解く谷崎ノンフィクション(5)≫谷崎潤一郎対談集 - 文藝編/小谷野敦・細江 光 (編) (2016/12/20)
- ≪資料で読み解く谷崎ノンフィクション(4)≫忘れ得ぬ人々と谷崎潤一郎/辰野 隆(著) (2016/12/19)
- ≪資料で読み解く谷崎ノンフィクション(3)≫谷崎潤一郎と異国の言語/野崎 歓(著) (2016/12/18)
- ≪資料で読み解く谷崎ノンフィクション(2)≫谷崎潤一郎: 没後五十年、文学の奇蹟 (文藝別冊/KAWADE夢ムック) /河出書房新社編集部 (編) (2016/12/17)
- ≪資料で読み解く谷崎ノンフィクション(1)≫谷崎潤一郎の恋文 - 松子・重子姉妹との書簡集/谷崎 潤一郎(著) 千葉俊二(編) (2016/12/16)
- ≪谷崎を取り巻くライバル❸≫羅生門 蜘蛛の糸 杜子春 外十八篇/芥川龍之介 (著) (2016/12/15)
- ≪谷崎を取り巻くライバル❷≫かげろうの日記遺文/室生犀星(著) (2016/12/14)
- ≪谷崎を取り巻くライバル❶≫田園の憂鬱/佐藤春夫 (著) (2016/12/13)
- ≪谷崎に多大なる影響を与えた師③≫悪の華/シャルル ボードレール (著) 安藤元雄 (訳) (2016/12/12)
(見て、触れて、考える絵本:うろこ)おつかいくん/鈴木のりたけ(著)≪ | HOME | ≫(2016年メディアミックス作品)12月10日に映画公開される原作&コミック
コメントフォーム

この記事へのトラックバック

この記事のトラックバックURL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
(見て、触れて、考える絵本:うろこ)おつかいくん/鈴木のりたけ(著)≪ | HOME | ≫(2016年メディアミックス作品)12月10日に映画公開される原作&コミック