(近代日本の戦術家③)天辺の椅子―日露戦争と児玉源太郎 /古川 薫(著)

2018/03/20 (Tue)

2014年NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の影響で、
当時、書店にも軍師ブームが到来!
戦国乱世に活躍した天才軍師から、近代日本の偉大なる参謀まで。
彼らの優れた頭脳と魅力的な人物像に迫ります。

肝の座った指揮官と戦略家
近代日本の戦術家


日露戦争で実質上の総司令官だった児玉源太郎を描いた作品。ドイツの戦術家メッケルから“日本最高の戦術家”と賞され、日露戦争の激戦地二〇三高地では攻略の立役者となった児玉源太郎。長州の支藩だった徳山藩出身で明治維新後も下士官スタートだったものの才能を発揮して順調に出世していく。しかし、彼の地位は常に“ナンバー2”にとどまった。宰相の座を目前にしながら、“天辺の椅子”に坐ることなく、日露戦争後に急逝。今少しの間生きておられたら、きっと総理大臣にもなった方だと思います。長州藩の支藩の家臣という出自に加え、元老に阿らず、権謀術数を弄さない生き方のために生涯「ナンバー2」に甘んじたが、台湾総督としてなど政治的にも秀でた才能を持ち、「天辺の椅子」に座るに値する人物だったようです。なりふり構わず元老山縣にすり寄る桂太郎や戦場で鬼になりきれない乃木希典との対比が興味深く感じられた。気骨の明治軍人であると同時に、優れた政治家としても活躍した児玉の生涯を、直木賞作家が描き出した歴史長編。
児玉源太郎(こだま げんたろう
嘉永5年閏2月25日(1852年4月14日) - 明治39年(1906年)7月23日)
陸軍軍人、政治家。階級位階勲等功級爵位は陸軍大将正二位勲一等功一級子爵。
日露戦争において満州軍総参謀長を勤め、勝利に貢献した。
👥家族・親族
岩永秀松の娘松子(マツ)と結婚、7男4女を儲けた(養女も1人迎えた)。
長男:秀雄(1876年 - 1947年) - 大蔵官僚、国務大臣などを歴任、寺内正毅の長女澤子と結婚。
次男:貞雄(1879年 - ?) - 分家
三男:友雄(1881年 - 1961年) - 分家、陸軍中将、中村雄次郎の娘みつと結婚。
四男:常雄(1884年 - 1949) - 1932年、陸軍航空兵大佐で退官。木戸孝正(木戸孝允の甥)の娘八重子と結婚。満州航空副社長となり、1938年社長。のち中華航空社長、大日本航空総裁をつとめた。
五男:国雄(1886年 - ?) - 中村覚の娘節子と結婚
養女:ヌイ/縫子(? - ?) - 山口宗太郎の次女、山口十八と結婚。
長女:ヨシ/芳子(1888年 - ?) - 立花俊吉と結婚
次女:仲子(? - ?) - 穂積重遠と結婚
六男:八郎(1891年 - ?)
七男:九一(1893年 - 1960年) - 内務官僚、島根県知事、厚生次官などを歴任、大森鍾一の娘幸子と結婚。
三女:モト/元子(1895年 - 1986年) - 藤田嗣雄(画家・藤田嗣治の兄で法制史学者)と結婚
四女:ツル/鶴子(? - ?) - 木戸幸一(木戸孝正の息子、八重子の兄)と結婚
爵位は嫡男秀雄が継いだが、秀雄と澤子夫妻に息子が生まれなかったため、2人の間に生まれた孫娘貞子(1902年 - ?)の夫忠康(広幡忠朝の子、1898年 - 1990年)が婿養子に迎えられた。曾孫で忠康の息子進は映画監督・テレビ映画監督。
古川 薫
┣ 大正14(1925)年、下関に生れる。
┣山口大学卒。
┣山口新聞編集局長を経て、文筆生活に入る。平成3年『漂泊者のアリア』で第104回直木賞受賞
┣妻は歌人の森重香代子。

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幕末・維新から日露戦争までの激動の時代を生きた戦術家児玉源太郎の生涯を描いた一代記。
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児玉源太郎陸軍大将は、30代の頃に読んだ司馬遼太郎の「坂の上の雲」で印象に残った人でした。日露戦争の英雄は、海の東郷平八郎、陸の乃木希典と云う定説が司馬遼太郎の「坂の上の雲」で本著の主人公の児玉源太郎への再認識へと繋がった様に思える。本著は、随分前に読んだ中村晃著の「児玉源太郎」と同じく彼の明治期に天才的な輝きを放った戦略家・戦術家として語られている。司馬遼太郎は確かエッセイで日本のクラウゼビッツやモルトケと評したとも記憶している。今や隠れた英雄とは言えないが、明治期に光芒を放った人物に焦点を当てた面白さがある。正直、表紙の顔からは悪戯好きな想像がつかないけど、遊女に惚れて結婚して、忙しいながら11人の子宝に恵まれるんだから凄い。多才な人であっても無私なところと気骨磊落洒脱なところもまた魅力。歴史にタラレバはないけれど、実家が貧乏でなかったら、もしどこかで違う人と巡り合っていたら、誰もが知る歴史上の人物となっていたのではと思う。地位だけが人間を決めるのではない、生き方が人間を決めるんだな、と思った。
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