(オトナ女子が読みたいエロ系文庫)あなたのエロスを引き出す3冊

2018/05/15 (Tue)


マニアックで凄みのある絶品官能小説3冊を紹介。
あなたのエロスを引き出す3冊


神を信じるキリスト教社会で生きる人にとっては、この小説は毒かも?
「ロベルトを、すべての男のものにしたい」若く美しい妻をならず者に凌辱させ、それを覗き見る様を日記に克明に記す老神学者オクターヴ。一方、夫の夢想を遙かに凌駕して、夫の目前で倒錯の限りを尽くす妻ロベルト…。「私は乳房と性器だけの肉」と嘯く女の魔性のエロスを描く山口文学の代表作。
本来的な意味での、”耽美”文学。神を信じるキリスト教社会で生きる人にとっては、この小説は毒をもったものになるのかも知れない。オクターヴは自分の妻ロベルトを客に差し出す。合理的なカルヴァン教徒である妻に現在を植え付けようとする。矛盾したようだが、恩寵の力を見るため、敢えて罪を犯すという企みだ。夫の意図はかなわず、女は合理性によって罪悪感を克服し、むしろ快感を抱くようになる。女は、夫の視線が邪魔で、夫を殺すも、死後も夫の視線を感じてしまう。これは、妻が神に見られていると感じたことになり、男の企ては果たされた。ロベルトとオクターヴの年齢差、ロベルトが義務で結婚したという時点で既に納得できる範疇を超えています。案ずるにオクターヴの差し向けた「天使」は我々読者か。私は巻末解説を読んでなんとなく主題が掴めたかな、という程度。とはいえ決して退屈ではなかった。直接的な表現の裏に、性に対しての思想と哲学が隠されており、性的なものが恥ずかしいと思う人にも入りやすい一冊です。山口椿氏は、三島由紀夫と交流があるなど、玄人受けする謎の芸術家。映像の浮かんでくるあられもない表現が美しい。
【目次】
罌粟〈コクリコ〉のように/薔薇と夜鴬〈ナイチンゲール〉/ロベルトは今夜
山口椿
1931年東京神田三崎町生まれ。作家、画家、チェリスト。
1959年パリ、ピエール・ギュモン国際コンクール銀賞。54歳から官能・残酷ものの小説、エッセイを書く。ひたすらエロスの側面から人間を凝視する孤高のモダン・ポルノグラフィーの巨匠、山口椿。有数のチェリスト、画家、かつて秘かに三島由紀夫に激賞された枕絵師、緊縛師、刺青師…。あらゆる異端美学を極め、我が国モダン・ポルノグラフィーにおける孤高のアーティザンとして知られる著者。


性に翻弄される人妻の激情を艶やかな文体で描く表題作ほか全七編。
子供の頃から「可愛い」というより「大人びている」と言われ続けた歯科医夫人、戸塚真紀。中学校の同窓会で偶然再会した成瀬隆史を待つ喫茶店の鏡の前で、彼女は秘かにつぶやく。「今夜こそ、一線を越えるわ」。性に翻弄される人妻の激情を艶やかな文体で描く表題作ほか全七編。電子書籍サイト「どこでも読書」で、女性の圧倒的な支持を集めた、菅野温子の傑作文芸ロマン。 女性の性的欲望をそのまま書くことに格闘してきた著者、渾身の一作。文章力、構成力、それに裏打ちされるリアリティ、さらに官能小説特有の言語表現の豊富さも読みどころ。性に対して、積極的な女性におすすめします。
菅野温子
静岡県生まれ。立命館大学文学部哲学科卒。1991年、スポーツニッポン新聞にて官能連載小説「スイートタイム」でデビュー。以後、各小説誌で活躍中。ラメール・アリスの変名を持つ。


九州のとある無人島に建設中の高級リゾート。藤枝真澄はその体験モニターとして、複数の女性達と共に招待された。しかし、その実態はセレブ男性相手の性の楽園の建設、誰でもOKな公衆便所女を探し出す為の罠だった!荒廃した病院、遺棄された水産加工場、廃墟の島を舞台に繰り広げられる群姦劇。嫌悪はやがて陶酔へと変わり、真澄はMの性癖を開放させ喜悦の涙を流し始める――。 基本的には女性が犯されていく話ですが、あくまでもレイプではなく、女性が秘めている被虐性を巧みに引き出し、一種の”汚す”感覚、筆致がカタルシスを呼んでいきます。著者はまだ新人ながら、すでにマニアックな女性読者を掴み始めています。
菅野温子『次々と、性懲りもなく』は逆に、性的冒険に消極的な方に。
瀬井隆
1965年生まれ。2009年『美人調査員調教魔の淫乱操作』(マドンナメイト文庫)にて作家デビュー。第一回団鬼六賞ファイナリスト。デジタル官能コンテンツ制作工房「SEI’s factory」主宰。
官能文学誌『悦』(不定期刊行)
全編書き下ろし。至極の官能文芸誌。悦vol.02 (季刊悦)posted with amazlet at 18.04.18睦月 影郎 館 淳一 子母澤 類 北山 悦史 宋 美玄 蛭田 亜紗子 松崎 詩織 牧村 僚 藍川 京 永田 守弘 橘 真児 渡辺 やよい 加藤 文果 本多 薫子 ラメールアリス 岡部 えつ
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「団鬼六賞」とは?
官能小説を対象とする公募新人文学賞。全2回。受賞作は出版された。
2010年、在命中のSM・官能作家・団鬼六の賛同を受け、開始された文学誌『悦』主催の官能小説文学賞。常識やルールに縛られない恋愛小説や妄想力に溢れた情愛小説で新たな官能小説の可能性を希求。第1回大賞に花房観音、第2回にうかみ綾乃、第1回優秀作には深志美由紀と、これまでの受賞者は女性が多く、デビュー後も大活躍している。第1回優秀作は、映画化(『花鳥籠』)された。
■受賞作一覧■
第1回(2010年)
👑大賞:『花祀り』花房観音(著)
優秀作:『花鳥籠』深志美由紀(著)
【選考委員】 団鬼六、重松清、高橋源一郎、睦月影郎
第2回(2012年)
👑大賞:『蝮の舌』うかみ綾乃(著)
優秀作:『淫府再興』沢里裕二(著)
【選考委員】 藍川京、石田衣良、高橋源一郎
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