(オトナ女子が読みたいエロ系文庫)乾いた心を湿らせる「女のための絶品官能小説 」:常連と意外な作家のエロスの競演「眠らないため息 (幻冬舎文庫)」

2018/05/08 (Tue)

乾いた心を湿らせる
「女のための絶品官能小説」

女性視点のエロ系文庫は驚くほどにバラエティ豊か。
その中から、ひそやかな妄想の広がりを叶えてくれる作品をタイプ別に厳選。
あなたの官能のスイッチが押されるのは……

常連と意外な作家のエロスの競演


性描写は作家の未知の顔を見せてくれる。
様々な官能が詰まったアンソロジーの中には意外な作家の作品も。

文庫: 245ページ
出版社: 幻冬舎

満たされない想いを心身にため込んだ女性たちの恋愛官能小説集。
『真夜中のパン屋さん』の大沼紀子、『芙蓉千里』の須賀しのぶ等、官能というキーワードとの組み合わせが新鮮な作家たち。そしてR‐18文学賞作家の宮木あや子、蛭田亞紗子らをはじめ、旬の女性作家たちの絶妙な組み合わせが実現した一冊。セックスと恋愛を軸に、丁寧に綴られたビターで上質なアンソロジー。
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大沼紀子『蜘蛛と蝶』
婚約者からタトゥ除去を頼まれた女性。結婚を機に、体に入れた蝶の刺青を消そうと訪れた施術先で再会した人物は・・・まさに、『蜘蛛と蝶』のタイトル通り。絡め方、展開、オチ、上手いなぁ。身体中に蜘蛛の巣のタトゥーを入れた男とか、何があろうと私なら近寄れない…。なんとなく『蛇にピアス』を連想した。 蝶のタトゥーが最後まで消え切らなかったのがよかった。
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小手鞠るい『小説詐欺師』
三十過ぎの売れない女流作家の元に舞い込んだ出版話、持ってきたのは色男。男に騙されているかと思いきや、実は男を利用している、というラスト。しかし、ここまで2人の秘め事をそのまま小説化しているのに気付かない男も間抜けだ。
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須賀しのぶ『上海魚』
19世紀末の上海が舞台。幼き日、中国人に呪いをかけられた女は、上海で英国人に囲われて暮らす遊女として暮らしていた。静かだが体温が伝わるような筆致は好み。失われた混沌の上海の息吹を感じた。短編ではなく長編で読んでみたいな。
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千早茜 『赤い閨』
バイトのデリヘルで奇妙な男性と出逢った女子大生。繊細で、でもちょっと怖くて、切なくて。夜景と火事がアクセントになりデリヘルという闇の世界を照らしている。まぁ、女性のしたたかさ、とでも言うんでしょうか。どんな過去があろうとも無かったことにできるのが女の強さであり怖さでもある。
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中島桃果子『ソメイヨシノ』
男子生徒と関係を持ってしまった美術教師。これはいったいどこのハレンチ学園なのかと思うのだが、現在の男は、行きつけ画材屋店員の兄。奇妙な三角、いや、四角関係(❓)。
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蛭田亜紗子『掃除機ラブ』
人生設計が狂い始めた30代OL。一目惚れしたのは北欧製の掃除機。彼女は掃除機にのみ欲望を抱く女性。タイトル掃除機ラブ…、そのまんま(笑)。お得意のフェチ・モノ。ユリ・フレーバー。笑えるようなテーマなんだけど中身はわりと、や、本気で、しかもかなりエロくて気恥ずかしくなった。掃除機とセクロスは正直びびるし、余りにも変態的な展開に唖然。これもう、エロいとかそういうレベルではないだろうな……。使用目的を完全に逸脱しているけど、もし掃除機が男なら本望だろう。
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宮木あや子『針とトルソー』
高校卒業後、40過ぎの男との政略結婚に絶望するも、逃げ出すこともできない茉莉。見かけも性格も大きく違う逸子と天橋立へ卒業旅行に行く。 『雨の塔』辺りに近い感触。お得意の(?)ユリ・フレーバー。
以上の7つの短編を収めたアンソロジー。
心と身体に満たされない想いをかかえる女性たち。心と身体ってやっぱり繋がってるんだろうな……。そして本当は誰もが寄り添ってくれる人の胸の中で安心して眠りたいのだと思う。確かにどれもこれも、眠れなくて思わずついてしまう悩ましげなため息が感じられる作品ばかりでした。 方向性も様々、 どの作品も個性的というか、クセの強い印象。名前のあいうえお順だが、ラスト2つユリ系続いた以外は、並びも悪くない。R-18文学賞出身作家、2人を含むように女性向け官能。オッサン向けの官能ではない。官能小説だけど、わりとあっさり読めた気がします。
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