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(オトナ女子が読みたいエロ系文庫)乾いた心を湿らせる「女のための絶品官能小説 」:常連と意外な作家のエロスの競演「果てる 性愛小説アンソロジー(実業之日本社文庫)」

kage

2018/05/12 (Sat)

オトナ女子R15あ

乾いた心を湿らせる
「女のための絶品官能小説

女性視点のエロ系文庫は驚くほどにバラエティ豊か。

その中から、ひそやかな妄想の広がりを叶えてくれる作品をタイプ別に厳選。

あなたの官能のスイッチが押されるのは……

アイコンりす今回の書籍案内人・・・・Arika


常連と意外な作家のエロスの競演  

性描写は作家の未知の顔を見せてくれる。

様々な官能が詰まったアンソロジーの中には意外な作家の作品も。


 果てる 性愛小説アンソロジー(実業之日本社文庫)

果てる 性愛小説アンソロジー (実業之日本社文庫)

文庫: 272ページ
出版社: 実業之日本社

Arikaアイコン(小)1溺れたい。それだけなのに――。
実力派女性作家が濃厚に描く、7編の狂おしい愛と性のかたち。 

かつて駆け落ちをはかった男の身体を求めながら、娘への虐待を繰り返す妻。ストーカーに怯え、別れた恋人の部屋に飛び込むアラフォー独身女性。元夫からの養育費が途絶え、現実逃避を夢想する母親。妖僧に惑わされるイケメン修行僧…。人生の「果て」に直面し、夜の底で求め合う女と男の、切なく狂おしいまでの生と性を実力派女性作家が濃密に描いた7編を収録する性愛小説アンソロジー。『月刊ジェイ・ノベル』掲載に書き下ろしを加えて書籍化。


女性作家による七つの艶めかしい物語。タイトルや表紙からすごいのを想像してましたが、切ないというかやるせないお話が多くあまり性的な要素は…という印象。どれもが個性的で刺激ある物語でした。どのストーリーも設定が深い。女性ならではの考え方だとは思うけれど、頑張っても変えられないその人間の属する階級(生活)であったり、我が子を虐待することの本当の心情であったり、見かけにとらわれる考え方であったり、と読んだ後、考えさせられるものが多かった。よく虐待のニュースで目にする「産めば変わるかもしれない」という自分勝手なエゴも、その一因かもしれないと思った。また見かけばかリを気にして生きている人も、違う視点で自分を見てる人がいるかもしれないと勇気づけられる話もあった。

安定感抜群の桜木紫乃、宮木あや子についてはあえて言及しませんが、桜木紫乃の暗くてしっとりした読み心地と、宮木あや子が描く親子の閉塞感には、安定の満足感をもらえた。また女性作家たちの「性愛」に対する表現方法を比べてみると、斉木香津『嵐の夜に』、岡部えつ『紅筋の宿』、花房観音『海の匂い』、この3つは性的描写も妖艶で濃密、色気たっぷりで艶美。禁忌を犯して燃え上がり堕ちて行く主人公など欲望の甘い匂いがぷんぷん香る。対して、逆に、直接何があったわけではない田中兆子『髪に触れる指』の方がずっとエッチい感じがした。エロシーンは皆無にも関わらずシャンプーをここまで官能的に描いて読者をドキドキさせる田中兆子の手腕が見事だと感じました。あからさまなエロよりも、間接的で微妙なそれのほうが官能的に思えてしまう不思議。お互い表面的にはおくびにも出さずに淡々としてるのに、なんとなく通じ合ってる雰囲気も好きでした。斉木香津 『嵐の夜に』と、まさきとしか 『南の島へ早く』はこの続きが読みたいと思った。

全体的に果ての先にある孤独が何とも言えぬ気持ちになるのであった。表題とは違う感覚を持ったのは、「性」を通してでなければ知ることができない人間の奥深い感情が書かれていると感じたから。独特の石棺を持っている作家さんの競演は、テーマがテーマだけに、実に興味深いものがあります。ダラダラと無駄に長いのを書くよりも、短いページで濃厚な小説を書く方が数段難しいし、小説としての価値が高いと思う、今日この頃。タイトルと装丁からして公共の場では読みづらいイメージ(カバーを掛ければ問題ないと思います)だった。思いがけない味だった。温もりは重要。快楽はいつか果てる、終わりが来る。そして、セックスは、性/生は哀しい。性と愛という大人の粋と甘いを表現したバラエティーにあふれたアンソロジーでした。


 
【収録作品】
■エデンの指図/ 桜木紫乃
片手間の純粋。明るいカノジョと幸薄すぎるネクラ女との間を揺れ動く色男の物語。色狂いというほど深刻ではないものの、女といえばやはりセックス、――といった自己中な考えを心の闇に抱えた男が主人公で、物語の中では男の出自に関する暗い過去がさらりと語られていき、天真爛漫な今のカノジョとの対比を見せる作中人物の配置が素晴らしい。心の暗黒に光を照らす今のカノジョが自分に相応しくないことは判ってい、その一方仕事絡みで知り合ったネクラ女へと惹かれていく男の心情をねちっこく描いていきます。しかし二人の女の間で煩悶する主人公といった定石へと流れることがないあたり、現代的というか、この主人公の個性というか、この主人公男性ダメダメだった。桜木さんは文章の上手さは流石だ。ストーリーもミステリアス感があって面白い。
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■天国の鬼 /宮木あや子
虐待された過去を持つ主人公が親になり、自身も娘を虐待してしまうという、切ない話。中学時代から17年ぶりの再会を果たす男女を描く。十分にホラーとしても通用する作品で、幼児虐待の連鎖や、あからさまな虐待行為に気がついていながらも傍観するだけで何もしない住人といった現代的なテーマを扱っている。そのあたりは定番ともいえる物語なのですが、そこにヒロインの過去の逸話も絡めて、過去の男と、今の幸せに見える夫とを対比させ、一見するとヒロインの物語に擬態しつつも、最大の悲哀と悲劇はこのヒロインの子供にあることを暗示するタイトルが心憎い。登場人物のいずれも読者の共感を排除するかのようなキャラ立てが凄い、というか、ヒドい(爆)一編でしょうか。「身体的にひとつになることはあっても、法的にひとつになることは永遠にない」男女をこれ以上ない妖艶さで描いている。性描写はソフトな表現なのに淫靡で官能的。内容は共感どころか、腹が立った。どうしても虐待の内容が受け入れ難く、読後感は悪かった。
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■髪に触れる指/ 田中兆子
結婚を二ヶ月前に控えて顔面骨折をした女性が主人公のよろめきを描いた物語で、収録作の中では読後感が一番爽やかな一編です。地元に帰省していた栗山千明似のヒロインが顔面を強打し入院。結婚が予定されているものの、未来のダンナは結局自分を顔だけで選んだのではないかと怖れている。そこへ、昔カノジョのことを好きだった、いかにも性格美男子の男と再会して、――という話。男性看護師の綺麗な指先、櫛で髪を梳かされシャンプーをしてもらう表現が美しい。入院した主人公とその病院にいた幼少期の男友達が想いを込めて主人公の髪をとかす描写がとっても官能的だった。プラトニックにも近くいちばん恋する気持ちや女心を豊かに表現する最も素敵。。直接的な性愛表現はありませんでしたが、沁みるような話。
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■嵐の夜に/ 斉木香津
父親と息子の両方と付き合った女。幸せになりたかった女の嵐。ストーカーから逃げてきた女が昔のカレシの部屋に逃げ込みセックス三昧の日々に溺れるも思わぬ幕引きに口アングリとなる。セックスで演技をする理由を「しあわせになりたかったから、かな」と答えていた、この言葉に唸った。しかし親子で・・・ってのはちょっとあり得ないかも。物語にオチもあり、場所や状況も扇情的かつ官能的で淫靡。完全にヤラれた一編で、これは思わぬ掘り出し物でした。作者がミステリー畑のひととはまったく知らずに読み始めたので、最後の結末には思わず眼が点になってしまったという……その後の修羅場が気になります。
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■紅筋の宿 /岡部えつ
迷い人待つ芋虫の傷を持つ女。バスを間違えてトンデモないド田舎に降り立った男が、ある女の家に泊めてもらうのだが、――と、いかにもな怪談風味で物語は進んでいくのですが、とにかく来るぞ、来るぞと読者に期待させる描写の一つ一つが素晴らしい。男が女の家に入ってからの描写がいちいちゾーッとする雰囲気を醸し出しているのは中田秀夫をはじめとする和モノの現代ホラー映画を彷彿とさせ、そこに傑作「アブレバチ」再びともいえる背筋が凍る言い伝えが語られという盤石の展開は、もう完璧でしょう。性愛小説らしいセックス描写は最高にグロテスクにして妖艶で、おぞましい描写は、しかし決して俗に落ちることなく、その描写が克明であればあるほど、この世ならぬものへと変じていく流れが素晴らしい。そしてエピローグふうに語られるシーンで民話の謎解きから一気に幻想へと急旋回する結末は、まさに一流の怪談文学の香気を放ってい、再び彼岸へと足を向けるか、それとも現実世界へと戻るのかを逡巡する男の心情を描いた最後の一文の完璧さ、美しさ、――言葉の節々から古風な香りを感じられて良かったな。官能性は死に深く関わっている、と村上龍が書いていたのを思い出した。ホラーとの融合させている点が面白い。岡部えつの作品は初めてですが、短編ながら、この怪談じみた物語は、ぞくぞくする恐怖と踏み込んではいけない魔性の世界を堪能。文体は肌が合うので、他作品を読みたい。
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■南の島へ早く/ まさきとしか
南の島の香りを追い求めるお母さんの逃避。ざっくりまとめると、子持ちのママさんが、母を取るか、女を取るかで煩悶する一編ながら、そのよろめきに深刻な犯罪を据えた展開がいい。ミステリーっぽく仕上げることも十分に可能な物語ではあるのですが、作者の筆はそうした深刻さを忌避する感覚で進んでいきます。子持ちママさんの香水に絡めた発情行為に予告された泣き笑いの結末。
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■海の匂い/ 花房観音
ストイックな僧侶を夢見るイケメンボーイが色地獄へと堕ちる。「花祀り」でも登場していた絶倫坊主の秀建が登場。真面目すぎる僧侶志願のイケメンボーイが、生臭坊主の奸計にハメられてヒドいことになるという話は、まさに団鬼六か綺羅光かといったキワモノぶり。男と女のサガがむき出しの花房節が炸裂⁉ 途中までは京のイメージと僧を主人公とした文体が相まってすごく好みだったのに、途中から一番えげつない展開にムムム。本作、最後にすごいのきてびっくりでした。げ、ゲスい…!でも“果てる”に相応しい最後。トリをとるだけの貫録からなのか?猛毒を吐いている。話の中身に一本筋が通っていて、安定感を感じる。性描写も「取って付けた感」がない上手さは気に入った。逆にいうと、花房女史のベトベトの悪魔主義の作風は、むしろこの完全にアウトなモロの開き直りぷりや極悪ぶりは笑って愉しめてしまうわけで、このあたり、作者の期待通りに読めているのかどうか甚だ心許ない(苦笑)。

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